井浦新さん演じる若松孝二監督とは?

 

――実際に、新さんが現場で若松監督を演じた瞬間って、どんな雰囲気だったんですか?

 

白石:クランクインの半年前くらいに新さんと会った時は、「なんていう無茶ぶりをしてくれるんですか!」「役者のこと何も考えてないですね」みたいなテンションでしたよ(笑)。そりゃね。まぁ、でもいざ撮影に入るまでに、正直僕は気づかなかったんだけど、新さんは月に1キロずつくらい太っていて。「オファーをいただいてからトータル10キロぐらい太りました」って言っていたけど、新さんにとっても、このタイミングで若松さんを演じるというのは特殊なことになるだろうし、人生においてもターニングポイントになるはずだから、やると決めた以上は、腹をくくってやってくれたんだと思います。

 

ただ、別に「若松さんそっくりになってくれ」ということではないんです。若松さん自身も、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』を撮影していた当時、「三島そっくりになってくれ」というわけではなかったので、それと同じです。だから、若松孝二を完コピするんじゃなくて、すごく都合のいい言い方にはなるんだけど、「新さんなりの若松孝二をやってくれ」と言った記憶はありますね。腑に落ちたような、落ちていないような顔をしていましたけど(笑)。

 

――それが一番難しいですよね。

 

大久保:新さん、撮影中ずっと無精髭を生やしていましたからね。途中でNHKの『新日曜美術館』の収録もあったのに、その時もそのままで。

 

大日方:衣装合わせの時点では、そこまで若松孝二に成りきろうとしているとは考えていなかったから、単純に「なんか最近デブってきてるな」って感じて、「あれ~? なんか緩んでるねぇ」みたいなことを言っていた気がする(笑)。

 

――それはひどい! 新さんは必死で役作りをされていたのに(笑)。とはいえ、新さんなりの「若松孝二像」を、率直なところ皆さんはどのように受け止められたのでしょうか。「よし! これで行こう」とすぐに決まったのか、それとも熟考されたのか。

 

白石:いや、そりゃもう、そういう風にしかならないよね。例えばもし「若松さんはもうちょっと首が傾いていたよね」みたいなことを言ったとして、その通りにしたところで何にもならないし、もう新さんに任せた以上は、それしかないわけだから。その代わり「それでスタートしたら、最後までそれで完走してね」「途中で変わらないでね」っていうのは、もちろんありましたけどね(笑)。

 

大久保:現場中、僕はもう「そこに若松さんが居る」みたいな錯覚に陥っていて。若松さんの現場って、監督が何かを見つけては怒鳴り散らすから、自然と監督の目に入らないところに逃げるクセがついていたんですよ。

 

一同:(笑い)

 

 

大久保:だから『止め俺』の撮影中も、新さんが僕のうしろにいると「あ、若松さんが居る!」っていう感じで、「視界に入らないようにしなきゃ」って逃げるような(笑)。久しぶりの「若松孝二感」を思い出していました。

 

――うわぁ、それはいいエピソードですね。

 

白石:それこそ「若松孝二に対してNGは出せないだろう」って。もちろん「若松孝二」じゃないんだけど(笑)。

 

――ははは(笑)。

 

白石:そういう変な二重構造があって。だから、新さんには途中からもう、何か言うのは止めていましたね。

 

――確かに! ものすごい二重構造が起こっていたんですね。それこそ皆で寄ってたかって「師匠」を演出して、照明を当てて、撮影して……という。

 

白石:だから例えば「こういうセリフを言ってみて下さい」という場面があったとして、「あぁ、若松さんそういうのやってましたね」っていうのは、皆で言い合ったりしていましたね。

 

――現場で付け足されていった要素もあるということですね。

 

白石:そうですね。それはあったと思います。

 

――撮影しているうちに、皆さんの中に「若松組に戻った」と感じる瞬間はありましたか?

 

 

白石:どうでしょうね。一番泣きそうになったのは、満島真之介くんのシーンです。彼は『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』で森田必勝役を演じた時に、若松監督からメチャクチャ怒られて、あちこちで「若松さんに鍛えられました」みたいな話をしているんだけど、『止め俺』では一転して、若松孝二を叱咤激励じゃないけど、「そんなの若松孝二じゃねぇよ!」みたいに言うわけです。

 

その時のテンションが高すぎて、「もうちょっと落とせる?」って言ったら、(と、おもむろに白石監督が当時の満島さんの様子を再現しながら)「で、出来ません!」って(笑)。「じゃあ、もうわかった」って言いながら撮った最後のシーンくらいで、「あ、あ…新さんが、若松さんにしか見えない……」って泣き始めて(笑)。「うわぁ、ちょっとお前、何しに来たの?」みたいな感じになった時はありました。プロデューサーの大友さんまで「若松さんって、こうやって映画を撮っていたんだ」ってしんみりしだして、「おいおいおいおい!」みたいな空気に一瞬なって。そういう時に若松さんを思い出したりしましたよ。

 

一同:(大笑い)

 

スタッフ座談会は後編に続きます!  ぜひ後編もお楽しみください!

 

(写真:加藤真大)

 

『止められるか、俺たちを』概要

 

止められるか、俺たちを

2018年10月13日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

 

【2018/日本/DCP/シネスコ/119分】

 

門脇麦 井浦新

山本浩司 岡部尚 大西信満 タモト清嵐 毎熊克哉 伊島空 外山将平藤原季節 上川周作 中澤梓佐

満島真之介 渋川清彦 音尾琢真/ 高岡蒼佑 / 高良健吾 / 寺島しのぶ / 奥田瑛二

監督 白石 和彌

脚本 井上淳一  音楽 曽我部恵一

製作 宗子  プロデューサー 大日方教史 大友麻子 

撮影 辻智彦  照明 大久保礼司

美術 津留啓亮  衣裳 宮本まさ江  ヘアメイク 泉宏幸  編集 加藤ひとみ

録音 浦田和治  音響効果 柴崎憲治  キャスティング 小林良二  助監督 井上亮太

制作担当 小川勝美  タイトル 赤松陽構造  宣伝プロデューサー 福士織絵

製作 若松プロダクション スコーレ ハイクロスシネマトグラフィ

配給 スコーレ

宣伝 太秦

 

 

公式サイト:www.tomeore.com

 

 

(C)2018若松プロダクション

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