アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。

 

アニメライターに限らずなのですが、好きなものを仕事にすると、当たり前のことですが、仕事として好きなものに接することになります。そんなお話です。

今も昔もやっていることは変わらない

 

アニメライターの仕事の1つは、アニメを観ることです。ですが、いかにアニメライターと言えども、仕事で記事を書くアニメのすべてを観ているわけではありません。

 

リリースや公式サイトをもとにして、紹介記事を書くことも多いので、その場合は、かけられる時間も少なく全話を観て書くことが物量的にできなかったりします。

 

ですが、ある程度アニメを観ていると、たとえばこの声優さんはこういう声質で、こういうキャラをよく演じているとか、この監督はこういう作風である、ということが見えてきます。

 

そこに至るまでの膨大な視聴数と、雑誌や本などの文献、ネット記事も含めた情報を収集していくことで、それを補完していくんですね。

 

アニメのことをあまり観ない人よりも、圧倒的にアニメや映像作品に対するリテラシーが高いことが、アニメライターには求められますし、それがあれば、実は書く能力は後付けでなんとでもなるもの(しっかりと文章について教えてくれる編集者や先輩ライターがいればの話ですが……)。

 

アニメライターの単価には、こうしたバックボーンも含まれます。ほかのライターも基本的には同じです。この人に任せておけば、詳しい記事をしっかり書いてくれるだろうという安心感(と成果物)に、対価が支払われるのです。

 

僕はというと、アニメライターを始める前から、アニメを観た時にノートへ演出やストーリーの流れ、気になった箇所を随時メモにとっていて、それが100冊くらいあります。それがベースですね。

 

何かを書くことは好きでしたが、記事としての文章テクニックは、出版社時代にみっちりと基礎を叩きこまれたので、今に至るまで、手に職を付けて編集業や物書き業を続けています。

 

当たり前にやっていたことなので、気づくまでに時間がかかったのですが、アニメをただ「見る」のではなく「観る」こと。そして文章を書くということを日常レベルで続けられること。

 

ライターという職業は、なるためのハードルがある意味、どんな職業より低いです。日本語が書ければ、極論できる仕事ですし、クラウドでのライター募集も増えました。

 

ですが、本質的な意味で、アニメの魅力を追求したり、記事を書いていくということは、そこに至るまでの上記のような日々の積み重ねが大事になってきます。

 

この辺り、「見る」と「観る」の違いを含めて、意識すること。ただ文章が書ければいいわけでも、アニメがただ好きなだけでもないので、ライターとして書き続けるのは難しいんですね。

 

 

 

 

>第34回 ネット配信は万全じゃない

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