アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。

 

アニメライターシリーズですが、実践的なことを意外と書いていなかったので、アニメ雑誌の花形・版権イラストのライティングについてです。

絵がヘタで文字の仕事に就いたのに絵を描くことになる

 

アニメ雑誌で、主に見開き2ページで展開する描きおろしのイラストが、俗に版権と呼ばれるもの。アニメ雑誌記事の一環で制作され、本編に合わせたイラストもあれば、本編では見られないコスチュームやポーズになることも。この辺りは、男性向けか女性向けか、アニメ雑誌の特色に合わせて変わっていきますね。

 

エンタープライズ山田も、数は多くないですが、版権イラスト記事を手がけたことがあります。雑誌記事は、まずページの構成を決める「ラフ」と呼ばれる作業を行い、それをもとにデザイナーが誌面デザインを作り、確定した文字量に合わせて、原稿を書いていくという流れです。

 

版権イラストは、そのラフの工程で、描いてもらいたいイラスト・シチュエーションをライターが簡単なイラストで描いて指定します。もちろん、編集からの指定がある場合もありますが、どんなキャラをどう見せるかは、わりとライターに裁量があったりしますね。

 

見開きの構図で、いかにカッコよく見せるのかというレイアウトの問題もありますし、イラストに合わせて丁度いい配置で作品の基本情報や、原稿を書くスペースも確保しておく必要が。そして何よりも難しいのは、そのラフを書いている段階では、アニメ放送時の盛り上がりが読めないこと。

 

すでに多くの話数が放送されているような既存シリーズでは問題ないのですが、ラフを切って(ラフとコンテは切るもの)、そのイラストをアニメ制作会社に作画・彩色・撮影処理をして制作してもらう期間、雑誌が実際に発売するまでの間には、2か月くらい間があります。

 

特に、僕が関わっていたアニメ誌は月末発売の雑誌だったので、4月新番の版権をやろうと思ったら、放送前の3月末か、4話程度放送された後の4月末に世に出るものとして考えなくてはなりません。

 

当然、作品の進行具合に合わせて描けるキャラクターやシチュエーションも限られてくるので、けっこう考え出すとキリがなかったりします。

 

あと、絶望的に絵がヘタだったために、絵描き以外の道でアニメに関わろうと思った僕が、ライターとなってからヘタクソなラフイラストを描くというのは、なかなかにしんどかったですね……。その分、僕の描いたイラストから、ちゃんとしたキャラクターのイラストが雑誌の誌面となったときの喜びは、ほかの記事よりも大きかったものです。

 

 

>第26回 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 誕生 赤い彗星』を観た

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