
2012年に逝去した若松孝二監督が代表を務めていた若松プロダクション。6年ぶりの映画製作再始動第1作目となる『止められるか、俺たちを』が、いよいよ10月13日(土)から全国順次公開されます。
スタッフ座談会後編では、前編に続いて大日方教史さん(プロデューサー)、白石和彌さん(監督)、辻智彦さん(撮影)、大久保礼司さん(照明)による濃密トークをお届け! 映画で描かれるようなメチャクチャな若松孝二監督のもとで映画を作ってきた皆さんが、本作を通じて得たものとはーー。映画本編と合わせて、ぜひその結論をお楽しみください。
若松プロの「名もなき戦士の物語」
――実際、めぐみさんが若松プロに居た時代のことは、皆さんは知らないわけじゃないですか。でも、それがあたかも実際にすぐ近くで見ていたかのように映っている。めぐみさんの抱えていたであろう想いが伝わってきて、途中から涙が止まりませんでした。
白石:小さい世界の話ではあるんだけど、『止め俺』に出てくる主要メンバーって、のちに監督になったり、カメラマンになったり、映画界で名を成している人なわけじゃないですか。でも、僕が今回めぐみさんを主役に選んだのは、「名もなき戦士の物語」にしたかったからなんです。めぐみさんの人生をどのように捉えるかは、別に人それぞれでいいと思うんだけど、めぐみさんの人生は決して「残念なもの」ではなくて、「輝いていたもの」であって欲しい、という気持ちはありました。
当時の若松プロが作っていたのは、いわゆるピンク映画ですよ。でも、滑稽なまでに七転八倒しながら映画作りに取り組んでいるところをこの映画で切り取れれば、それは儚くとも「美しく輝いた人生である」と言えると思ったんです。ある意味、一歩間違えれば僕も「めぐみさん」だったわけだし。そこを否定するような映画にはしたくなかった、という思いはあるんですよね。
――めぐみさんを中心に若松プロを描くことについて、皆さんはどう感じていらしたんですか?
大久保:僕が知っている『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』とか『キャタピラー』を撮っていた頃の若松プロにも、助監督として付いていた女性がいて、結果的にその人たちは映画界を去ってしまったりしていて、そういうのをリアルタイムで見てきた自分からすれば、結構見るのがつらかったですね。
――めぐみさんの後輩にあたる人たちの姿と重なったということですね。
大久保:そうです。あとはあの雰囲気って、もろに大学の映研時代に入り浸っていた部室と被るんですよね(笑)。そこら中にカメラが転がっていたり、日本刀が転がっていたりするような。
白石:へぇ~! そうなんだ。確かに部室感はあるかもしれないね。
――扉を「ガチャ」って開けて入ると、誰かしら中に居る、みたいな感じは確かにすごく似ていました(笑)。実際、若松プロは映画のような雰囲気だったんですか?
白石:ロケ場所の都合もあって、完全再現というわけにはいかなかったんですけど、そんなには違っていないと思いますね。冷蔵庫に鎖がかかっていたのも実話ですし(笑)。