2018年のゲーム業界で最も耳にする機会の多かったフレーズと言えば、「eスポーツ」ではないでしょうか。スマホ・ビデオゲームないしコンピューターゲームを用いて行う競技の総称であるeスポーツ。米証券会社ゴールドマンサックスの発表によれば、「2022年度までにeスポーツの市場価値は約29億ドルに上る」とのことで、もはやゲーム業界を超えて世界中の人々に注目される一大トレンドになりつつあります。

 

しかし一概にeスポーツと言えど、数多くのゲームタイトルが発売されている現状や基本的な競技ルールが各タイトルで異なる等の点から、「eスポーツって盛り上がっているけど、結局何なの?」と感じる人々が多いのも、また事実。そこでSWAMP(スワンプ)では、ゲーム業界で日々を生き抜き、ニュース記事やイベント取材を行うライター・龍田編集長の加藤による、今話題のeスポーツについてテーマトークを実施! eスポーツイベントを取材する編集・ライターのお仕事や、盛り上がる注目のゲームタイトル、そしてこれまでとこれからのeスポーツに関する出来事について、追求していきます!

 

eスポーツを取材するお仕事とは?

 

加藤:僕はSWAMPの編集長という立場ですがーー元々KADOKAWAでゲーム・アニメ系の編集ライターをやっていたこともありーーほかの媒体でも編集・ライターとして活動しているんですよ。中でもゲーム関係の記事制作が多くて、取材好きライターとして幅広くやっています。eスポーツ系の取材だと、大型eスポーツイベントの「RAGE」や、セガの人気タイトル「ぷよぷよチャンピオンシップ」などなど。『モンスターストライク』(以下『モンスト』)のXFLAG PARK2018」も大盛況でしたね。

 

格闘ゲームの大会等も取材しますが、フレーム数やコンボというジャンルの専門的なことを書くより、客観的に見てどういう人たちがイベントに訪れていたのか? というのを中心に取材しています。2017年辺りからeスポーツ系の取材依頼は多く入っていて、去年だけで30近くの現地取材を担当しました。

 

そのせいか、現地でトッププレイヤーの戦いを見るうちに、自分がそのゲーム作品をプレイすると「なんで自分はこんなにうまくできないんだ」と感じる場面もあります(笑)。なので、段々と取材しないゲーム作品を遊ぶようになったりはしていますね。

 

龍田:逆にってことですか?

 

加藤:逆にですね。『シャドウバース』のeスポーツイベントはよく取材しますが、僕は上手くないのでそのかわりに『ドラゴンクエスト ライバルズ』をプレイしているとか、そういう感じですね。時間があんまり取れませんが、「RAGEじゃなくて「勇者杯」には出たいとか、そういうスタイルになってきて。やっぱりeスポーツイベントを見てると、自分でも「あの場に立ってみたい」という気持ちが湧いてくるんですよ。

 

龍田:やっぱりたぎるものがありますよね。

 

加藤:たぎりますね。ゲーム系の仕事から離れた時期もありましたが、ちょうどスーパーファミコン世代なので。(たぎるのは)本能みたいなものですよね。龍田さんはどのようなイベントを取材したり、配信を見たりしているのですか?

 

龍田:僕はフリーのゲームライターなのですが、加藤さんの意見と同じくeスポーツ関連の需要がもの凄くありまして。eスポーツイベントの取材記事に加えて、地方で発足したeスポーツ団体の方にインタビューをしに行ったり、ゲーミングハウスを訪問してプロゲーマーの方たちにフォーカスした記事を執筆しています。あとは、競技シーンを観戦する際に知っておいた方がいい前情報などを提供する観戦コラムも連載中です。

 

加藤:なるほど! 最近で言えば、『実況パワフルプロ野球』がNPBと組んで(プロ野球の)シーズンオフに「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2018 」を運営したりしていますよね。お馴染みのタイトルがeスポーツ参戦というのが去年から今年にかけての流れとしてあって、それだけイベントやタイトルが多いということは、その模様を伝えるための仕事も増加傾向にあると思います。僕も龍田さんもその恩恵に授かっているという感じですよね(笑)。気になる人も多いと思うので、実際にeスポーツシーンに関係のある編集者とライターの視点から、イベント取材時における業務の流れについてお話できればと思います。

 

龍田:はい、よろしくお願いします。

 

加藤:好きなゲームタイトルだったり、出場する選手の応援に行くというのが一般的だと思いますが、取材する場合は少し様子が違ってきます。1つのタイトルの試合会場に張り付く時もあれば、イベント全体レポート用にオープニングや試合の模様を記録したり。そこから出演者が集まるステージイベントなどがあれば駆け付けたりというのを、ひたすら繰り返します。現場の写真を撮影して控え室や記者席で記事を書いて、終わったら記事を書くためまた会場を歩き回るというイメージですね。試合の待機中に速報記事を上げつつ、イベントが終わったらすぐレポート記事の作成に入るみたいなルーティーンで、単純な時間で言うと、運営の方や選手以上に稼働しているかもしれません。ある意味エレクトロニックというよりエクストリームな仕事と言えなくもない(笑)。

 

龍田:言いえて妙かもしれません(笑)。eスポーツで活躍するプロゲーマーやイベントのMC等を取材する編集者とライターから見れば、稼働時間の長さはもちろん、新情報や試合結果の逐次記録、写真撮影、そしてそられをちゃんとした記事に仕上げるっていうのを考えると、相当な労力が掛けられていますよね。本当に地道な作業です。

 

加藤:そうですね。そもそも現地に行って執筆と撮影を両立する場合、記者としての能力や撮影技術、もちろんゲームリテラシーも相当求められます。プロゲーマー程では無いにしろ、カードゲームだったら流行している環境やカードだったり、格闘ゲームならキャラごとの相性や有効なコンボについて知っているかどうか。あるいは調べられる能力が備わっているかも重要です。総合的な専門性が求められるというか。

 

龍田:僕も改めて実感しました。そう考えるとやはり大変ですね(笑)。

 

eスポーツって実際に盛り上がってるの? 取材で感じた熱気を語る!

 

加藤:eスポーツが一大興行みたいになっている中で、それだけ面白いゲームや注目されているゲームがあるというのは、もの凄く根本的な部分だと思います。各ジャンルごとにFPS、格闘、スポーツ、カードゲームという具合に幅は広いですが、タイトル間で盛り上がりの違いを俯瞰して見てみたいところですね。

 

龍田:加藤さん的に注目度が高いタイトルはどれですか?

 

加藤:僕が一番凄いと感じたのは、「RAGE」で見たユーザー層の幅広さと単純な人数の多さですね。「RAGE」は『シャドウバース』を中心にしているのですが、『スプラトゥーン2』の大会が組み込まれたときがありました。ほかにも『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(以下『スマブラSP』)の試遊が国内で初めてプレイできたときも、朝早くから長蛇の列が出来ていましたね※。『スプラトゥーン2』の大会は、4人1チームということもあり、会場からあふれんばかりの人がいまして。

 

「RAGE Splatoon2 Extreme」の観戦風景。会場からあふれんばかりの観客と参加者で大いに盛り上がりをみせていた。

 

※:2018年3月21日(水・祝)に幕張メッセで開催された「RAGE 2018 Spring」。「RAGE Shadowverse Chronogenesis」、「RAGE Splatoon2 Extreme」「RAGE ストリートファイターV 白虎杯」が同会場内で実施された。『スマブラSP』の試遊が行われたのは同6月17日(日)に行われた「RAGE 2018 Summer」。

 

龍田:そんなに?! 興味深いですね! 

 

加藤:「RAGE Splatoon2 Extreme」は女性だけで構成されたチームもいましたし、若者に人気の『シャドウバース』と30代以上のプレイ人口も多い『ストリートファイター』シリーズと相成って、来場された人の層が幅広かったのがとても印象的でした。

 

龍田:ブランドの持つイメージが客層に現れているというか。「eスポーツが盛り上がってるけど実際どうなんだ?」って言われたときに、今のような話があると、説得性が強くなる気がします。

 

 

■次ページ:eスポーツで注目されているゲームタイトルとeスポーツ元年を振り返る

 

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