三宅監督の映画原体験とは?

 

――三宅監督は「自分は誰かの助監督を長く経験しているわけではないから、ほかの監督の現場も見ていないし、いいか悪いかの判断というのは、映画を観ることでしかわからない」と仰っていましたが、演出方法も映画を通じて学んできたということですよね。

 

三宅:そうです。学生時代はひと月に映画館で60本観ていた時期もありましたが、映画美学校に通っていた際にある時、塩田明彦監督から「数じゃなくて、1本をもっと徹底的に観てみたら」と言われたことも大きかったと思っています。

 

――三宅監督は北海道出身とのことですが、札幌時代はどうでした?

 

三宅:ほかの同級生と比べれば観ていた方だと思いますけれど、観られる映画も限られていたので。

 

――もともとアメリカ映画を好んで観ていたそうですね。三宅監督にとっての映画の原体験とは?

 

三宅:マコーレー・カルキン主演の『ホーム・アローン』とか、ディズニー作品だったと思います。北野武監督の新作が映画館で上映されるときは「必ず家族そろって初日に観に行く」みたいな恒例イベントはありましたけど。

 

――なかなか興味深い家族行事ですね(笑)。

 

三宅:『BROTHER』を観終わって映画館から出てきた途端、俺も弟も完全にヤクザの口調になっていて(笑)。挙句兄弟ゲンカになって、親からメチャクチャ怒られるという。たまに母と二人で映画を観に行くこともあったし、いまでも帰省すると親父と「映画でも観に行くか」って、一緒に映画館に行ったりしていますね。

 

――仲のいいご家族なんですね。

 

三宅:いい方だとは思いますね。さすがに高校生くらいになると基本的には一人でしたが、映画館にはデートでもよく行きましたね。

 

――へぇ~。お話を伺っていると、友だちもいて、家族仲もよくて、デートもして。決して「映画だけに救いを求めていた」というタイプではない。とはいえご自身としては「映画が自分を形作った」と思われますか?

 

三宅:それは間違いないと思いますね。学生時代は映画のことしか考えていなかったから。まあ、基本的にはいまもそうですけれど(笑)。

 

――いまも生活の中心は映画ですか?

 

三宅:うーん。いまは仕事だから中心であることは間違い無いんですが、ちょっと変わった部分もあるかな。というのも、公開や次作の準備などが重なってしまうと、やっぱり映画館にあまり通えないのが悔しいです。自分が尊敬する監督たちは、現役で働いているときも必ず映画館で映画を観ている人たちだから。映画を観なくなってしまう映画人が多い中で、「変わらず映画を観つづけている監督」が、自分はすごく好きなので。

 

――柄本佑さんも同じタイプですよね。

 

三宅:佑のことは、本当に尊敬していますね。息を吸うように映画を観ていますから。

 

 

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