その後は、本作を観た菊地さんが想起したという、フェデリコ・フェリーニ監督の『甘い生活』の話題に。

 

「(パパラッツィ/パパラッチの語源にもなった)ゴシップ記事のカメラマンという、それまで不可触とされていた仕事について描かれていること」「見て見ぬふりをしてしまう人間の姿(傍観者効果)を映しだしていること」「現代人の孤独や、神なき世界で人はどういうふうに倫理的に動くべきなのかが描かれること」などが、本作とよく似ていると感じたのだそう。

 

「ただ『ザ・スクエア~』の方が『甘い生活』よりもユーモラスで、苦いですね。『甘い生活』みたいにウットリさせないところがいいと思う」という菊地さん。

 

さらに「『甘い生活』が製作されてから既に60年が経っているわけですが、この映画でも同じ問題を扱っている。『甘い生活』では乱交パーティの果てに「許しの象徴」として少女が出てきますが、本作の最後にはチアリーディングのシーンが出てきて、少女たちが命懸けで助け合うところに、一縷の希望が託されている」

 

という菊地さんに対し、監督は「最近観た映画の中で『甘い生活』のことを思い出させてくれたのは、パオロ・ソレンティーノ監督の『グレート・ビューティー/追憶のローマ』です。もちろん私も『甘い生活』を若い頃に観ています」とコメントしたうえで、菊地さんが指摘した「チアリーディングのシーン」について、またしてもこんな舞台裏を明かしてくれました。

 

監督:実は、私の娘がチアリーダーをやっているんです。最初に娘が『チアリーダーをやりたい!』と言い出したときは、正直少し嫌だなぁと思っていたんですが、試合で皆がスクエアのなかで協力し合う姿を見て『なんてすばらしい競技なんだろう』と感動したんです。映画で「スクエア」をシンボルとして使うのであれば、このシーンを使おうと考えました。

 

そして「たった一人でも欠けると崩れてしまうチアリーディングという競技が、社会のいい隠喩になっていると感じた」というオストルンド監督は、「お互いに助け合って、お互いに信頼しなければいけない。まさに、そこに希望がある」と、菊地さんの読みがしっかりと的を得ていたことを証明してくれました。

 

 

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