
『Shall we ダンス?』『舞妓はレディ』などで知られる周防正行監督の最新作『カツベン!』が、今年12月に劇場公開されます。公開に先立ち、昨年10月には福島市民家園内にある国指定重要文化財の旧広瀬座で行われた、周防組の撮影を見学する機会に恵まれました。その模様をレポートします。
周防監督5年ぶりの新作『カツベン!』の撮影風景とは?
『カツベン!』は、映画がまだサイレントかつモノクロで「活動写真」と呼ばれていた約100年前、映像にあわせて解説や口上を入れる役割を果たし、作品以上の人気を誇っていた「活動弁士」(通称・カツベン)を主人公にした物語。そんな活動弁士を夢見る主人公・染谷俊太郎役を演じるのは、いまや日本映画に引っ張りだこの成田凌さん。そして共演には、黒島結菜さん・永瀬正敏さん・竹中直人さん・高良健吾さん・渡辺えりさん・井上真央さん・小日向文世さん・音尾琢真さん・竹野内豊さんといった、豪華キャストが名を連ねています。
私が見学したのは、旧広瀬座を舞台に撮影された成田さん扮する俊太郎の活弁シーン。旧広瀬座は、明治20年(推定)に芝居小屋として建てられた趣のある建物で、昭和の頃には映画館としても使用されたことがあるそうです。歴史のある文化財内での撮影とあり、エキストラの方々も大正時代の衣装を身にまとい、まるでその一角だけタイムスリップしたかのような雰囲気に包まれていました。
個人的に感慨深かったのは、かつて配給会社勤務時代に『M』という作品でご一緒した高良健吾さんと、なんと12年ぶりに再会できたこと。立派な俳優として大活躍されているにもかかわらず、熊本から上京してきたばかりの当時と変わらぬ実直な好青年ぶりに、思わず胸が熱くなりました。
現場では、映画館館主を演じる竹中直人さんと、その妻役の渡辺えりさんが『Shall we ダンス?』を彷彿とさせる息の合ったやりとりを繰り広げている場面も垣間見ることが出来ました。中でも、ついさっきまで口笛を吹きながら歩き回っていたはずの竹中さんが、いつのまにか舞台袖にいらして一瞬にして役に入っていかれた姿が、とても印象に残っています。
見学日のメイン撮影は、俊太郎役の成田さんがフロックコートを羽織って観客の前で初めて活弁を披露するシーン。当時はタバコの煙でもくもくしていたであろう館内が、数十人にものぼるエキストラとスタッフらによって臨場感たっぷりに再現されていて、真剣な眼差しでカメラのモニターを見つめる周防監督からも、緊張感がみなぎっているように感じられました。とはいえ、我々が撮影現場を思い浮かべる時につい想像しがちな、怒号が飛びかうような場面は一切なく、撮影は拍子抜けするほど穏やかな雰囲気の中で順調に進められていったのです。
劇中で重要な役柄を務める永瀬正敏さんが登場したのは、まさに日が暮れる直前のこと。この日の永瀬さんの出番はワンシーンでしたが、撮影の状況によっていつお声がかかってもいいように、なんと午前中から待機していたのだそう。映画ではあっという間のシーンでも、舞台裏では膨大な時間をかけて撮影されているということが、改めて実感出来た瞬間でした。
周防監督5年ぶりの新作となる映画『カツベン!』は監督史上、「一番映画愛に満ちあふれて、笑えて、ハラハラドキドキして、泣ける!」との呼び声も高い意欲作です。活動弁士を主人公にしながらも、「アクション」×「恋」×「笑い」の要素を織り交ぜたエンターテイメント作品ということで、果たしてどんな映画に仕上がるのか、今から期待が膨らみます。
『カツベン!』作品情報
映画『カツベン!』
12月公開
監督:周防正行
出演:成田凌 黒島結菜 ほか
公式サイト:http://www.katsuben.jp/
(C) 「2019カツベン!」製作委員会