SWAMP(スワンプ)でもインタビュー記事をお届けした『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督や、『海を駆ける』の深田晃司監督も卒業生として名を連ねる映画美学校。3月16日(土)には、「脚本コース」第9期初等科(前期:4月26日〜10月5日)の開講に先立ちオープンスクールが開催されました。

 

 

同クラスの主任講師を務める脚本家・映画監督の高橋洋さん(中田秀夫監督『リング』シリーズほか)、日曜昼クラスの担当講師である金巻兼一さん(大森貴弘監督『夏目友人帳』ほか)、金曜夜クラスの担当講師である宇治田隆史さん(熊切和嘉監督『私の男』ほか)が登壇され、各クラスの特徴などがガイダンスされました。

 

本記事ではその中から、企画から脚本を作り、実際の映像になるまでの道程を体験できた高橋さんの講義の模様をレポートでお届け! 実際にオープンスクールに参加している気持ちでお楽しみください。

 

実話怪談をベースに実際の映像にするまでに考えること

 

ジャパニーズホラーを語る上で外せない映画人である高橋さんですが、講義の題材となったのはご自身が監督も担当した『怪談新耳袋 -開けちゃだめ編-』に収録の一編『庭』。原作となる『新耳袋』シリーズの一編から、5分間の映像を作る際にどのようにして企画開発を行い、脚本を制作して形にしていくのかという実践的な解説がなされていきます。

 

高橋さんからは「5分間の映像のシナリオは、初心者の方にとって全体の構成を把握しやすくクライマックスがなんであるのか考えやすいので、企画の題材としてちょうど良いんです」とのこと。それでは一緒に考えていきましょう!

 

 

受講者に配られた原作となる実話怪談。A4用紙1枚におさまるほどの短さですが、家を探すとある男が体験した恐怖体験が綴られています。1人で講義を受けていたら怖くなってしまいそうですが、一緒に脚本家を志す仲間がいるというのも映画美学校のいいところ! 高橋さんの講義では音読を重視しているとのことで、受講生によって朗読。黙読ではなく音読することで、内容がより鮮明に頭に入ってきます。

 

 

読んでいくと漠然とした映像イメージが浮かんでくるはず。実際の講義では、受講生から出たアイデアをベースにするのでもっと漠然としたレベルからアプローチするとのことですが、今回の怪談エピソードでクライマックスとなるのは「檻の中にいる人のようなもの」が描かれるところ。企画会議のテーブルにのった理由もまさしくそこであると、高橋さんから解説されます。

 

また「最近はオチが重視されがちですが、オチは物語を終わらせるための仕掛けみたいなもので、一番大事なのはクライマックスです。オチが有名な『猿の惑星』などの作品もありますが、そういう秀逸なオチはめったに出来るものではないので、まずはクライマックスを重視しましょう」とも。クライマックスが大事なんですね!

 

 

「なぜクライマックスを重視しているかと言うと、そこから逆算する形で主人公が何者であり、どんな問題を抱えているから主人公たり得るのかが導き出せるからです。クライマックスには必ず主人公が立ち会うのですが、それは主人公が抱えている問題が解消されるから。その問題が、盛り上がるクライマックスまで観客を導くエンジンとなるんです。それが機能していないと5分間の映像であっても観客は飽きてしまうので、いかに魅力的な問題を抱えているかが必要です」

 

と、脚本を制作する上で構成の肝となる部分が語られました。原作の主人公は家を探している男性。しかし「いかにして家を見つけるか」はこの場合、魅力的な問題とはいえない。つまりこの男性はこのままではドラマの主人公になり得ない。男性はクライマックスで怪奇現象に遭遇するけど、それは視点として立ち会っているに過ぎない。ではどうすれば視点ではない主人公が見出せるのか? が語られていきます。

 

もう1つの問題は原作通りに素直に映像化すると、この男性が不動産屋から紹介された物件を下見する描写が延々と続いてしまうこと。これでは文章ではなくTVで放送される映像であれば、チャンネルを変えられてしまうだろうという問題が。冒頭から視聴者を掴んでいくための映像にするためにはどうしたらいいか? その問題を解消する脚本制作に進みます。

 

 

◆次ページ:ドラマになる脚本の作り方とホン読みの重要性。

 

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