中村監督のもの作りの根底にあるもの

 

ーー今回の『ちえりとチェリー』を共同脚本されている島田満さんは、女の子の持っている優しさ・か弱さ・力強さ・想像力といったものを描くのが非常に巧い方ですが、本作にもその持ち味が発揮されていますよね。さらに出崎作品における父性のように、ちえりの父親の存在があって、中村監督がこれまで作られてきた作品の集大成になっていると感じます。やはりお二方の影響は本作にとって大きかったのでしょうか?

 

中村:島田さんの存在はものすごく大きいです。僕が物語のプロットを最初に書いて、そこから島田さんが脚本にして絵コンテを描いていったという順序で進んでいったのですが、母親と娘・ちえりのシークエンスや母親が何を考えていたのかなど、物語の奥行きを加えてくれたのは全部島田さんなんです。島田さんがいなかったら、こういう作品には絶対になっていないですね。

 

出崎さんの影響というのは……なんだろう。意識をしていたかと言うとしていないんですけれど、自分があっちの世界に行って、出崎さんに「中村君、あれから何をやってたの?」って聞かれたら、「こんな作品を作りました」って『ちえりとチェリー』を作ったことを報告したいという気持ちはあります。そういう意味での影響ですかね。

 

 

ーー人形アニメーション作品は『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が2017年にスマッシュヒットを記録したり、昨年は『ぼくの名前はズッキーニ』が日本でも上映されたり、じわじわと注目を集めてきていると感じます。そんな中で『ちえりとチェリー』が全国公開されることになりましたが、人形アニメーションを取り巻く環境はどう感じられていますか?

 

中村:KUBO/クボ 二本の弦の秘密』と『ぼくの名前はズッキーニ』でも、まったく表現方法が違うじゃないですか。「人形アニメーションってこういうのがいいよね」っていう方向性はスタジオや作家によってみんな違っていて、それをすべてひっくるめられるのが人形アニメーションというか、アニメーションの面白さだと思うんです。なので、僕の中で考える人形アニメーションの可能性というものを広げていければいいな、と感じていますね。

 

もちろん、「こういうアニメーションも面白いよね」って(人形アニメーションを観て)思ってくれる人が増えたらいいなと思います。海外だと人形アニメーションのほうが制作費が安いので作る人もいるのですが、日本の場合は逆に人形アニメーションの方が高くなってしまうので、作るとなると大変なんですけれど(苦笑)。

 

ーーいわゆる業界的な仕組みですね。おっしゃられたとおりアニメーションは多様性があるものですし、中村監督のキャリアもドラマCDやいわゆる深夜アニメ系を手がけられ、人形アニメーションを作られている。数多くの作品を作ってきた中で、ご自身の中で一貫して心の中心に置かれていることは、どんなことでしょうか?

 

 

中村:本当に例外的に「気楽に楽しんで終わり」っていうものを作ることもありますが、「観た人の何かの糧になるようなものを作りたい」というのがいつも軸にあります。僕がアニメーションを楽しんで観ていた出発点は、(『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』などの)いわゆる「名作劇場シリーズ」で、硬い言葉で言うと情操教育的側面があったと思うのですが、そういう作品を観て育って出崎さんに出会って。

 

出崎さんの「男の生き様ってこういうことなんじゃないの?」という想いが自分の中にも染み付いているので、何か作品を作ろうとしたときにーーもちろんエンターテイメントとして観たときに面白かったなというものがないといけないけれどーー子どもの頃の僕がそうだったように、「そこから何かを受け取れる」ような、消費されるだけじゃない物語というものを描きたい。

 

観て忘れちゃってもいいんですけれど、20年後とか30年後に「子どもの頃に観た人形のアニメーションがあって、それが自分の中のコアの1つになっているんだよね」っていう人が、1人でもいればいいなっていう気持ちで、いつも作っています。

 

ーーとても感動しました……! 僕もそのような気持ちで、作られた作品を紹介する記事を作って、1人でも多くの方にとって作品の出会いにつながればいいなと思っています。本日はありがとうございました。

 

『ちえりとチェリー』概要

 

『ちえりとチェリー』

2月15日(金)より全国のイオンシネマにて2週間限定ロードショー!(一部劇場を除く)

 

キャスト(声の出演):高森奈津美、星野源、尾野真千子、栗田貫一、田中敦子、伊達みきお(サンドウィッチマン) 、富澤たけし(サンドウィッチマン)ほか

原作・監督:中村誠  脚本:島田満、中村誠 キャラクターデザイン:レオニード・シュワルツマン、伊部由起子 音楽:大谷幸 主題歌:Salyu「青空」(TOY’S FACTORY

製作:「ちえりとチェリー」製作委員会(フロンティアワークス、東映アニメーション、ギャガ) 配給:フロンティアワークス 配給協力:イオンエンターテイメント

 

 

公式サイト:http://www.chieriandcherry.com/

 

 

Ⓒ「ちえりとチェリー」製作委員会

 

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