アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。

 

数回にわたって、SWAMPER・エンタープライズ山田のアニメ制作進行時代のお話をお送りしております。

 

わずかな期間だけでしたが、アニメ業界にいたこと、そしてそこから続くアニメとの関わりは、やはり僕の人生にとって大きなウェイトを占めているんですね。

回収した素材を見てアニメの現実を知る

 

制作進行の仕事のイメージは、アニメーターさんからの上りであるカット袋の回収というものが多いのではないでしょうか。実際僕のやっていた車両進行の仕事も、基本的には一日に何回か外回りに出て原画を回収してくるものでした。

 

その原画が入っているカット袋を、車の中で開けて見たりするわけですが、これがアニメーターの上りなのかと思うこともあります。シリーズの全話数を統括する総作画監督、話数単位で修正をする作画監督、以下作画監督補やら何人もの作画監督がEDクレジットに載ることが常態化していたアニメ業界ですが、それも納得という感じでした。

 

絵が描けない僕がいうのもなんですが、わざわざ深夜に時間をかけて回収に行って、1カットだけ上りがあって、その中身がどうしようもないものだったとき。これでいいのかどうか、その現状をどうすることも出来ないのですが、何ともいえない虚しさがあります。

 

もちろん、後年、貴重な原画やセル画を目にする機会もあり、それはアニメファンとして眼福ものだったりするのですが、やはりそうじゃないものもあるわけで。アニメが放送される時には、その原画の絵はほとんど残らないわけで、それがいったいその人にとって何になるのか。そういう仕事の仕方は、今でも頭では理解できても、心では理解できません。

 

ネガティブなことは、このくらいにしておきましょう。そういう一面もありますが、アニメの世界は、それを越えてあまりあるものがあるのです。それを信じましょう。

 

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第10回 セル画との触れ合い

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