
アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。
本コラムを執筆している平成生まれのアニメファン・エンタープライズ山田のアニメ制作時代のお話を綴ってきました。時は流れて、その後行きついた出版社で接することになったセル画のお話です。
セル画にときめく平成生まれのアニメファン
画像出典:http://images-jp.amazon.com/images/P/B005Z6G36E.jpg
セル画というものは、ひと昔前であれば、アニメファンなら誰しも知っていたもの。昔のアニメは、セルロイドで作られた「セル」にアニメーターが紙で描いた絵を転写。それに絵具で色をつけて、大きな撮影台で美術と重ねて撮影して映像にしていました。
基本的に「セル画」と呼ばれているものは、彩色されたものを差します。アニメに実際に使用されたセル画は、「まんだらけ」などのショップで目にすることもできますが、現在では最後までセルアニメだった『サザエさん』もデジタル化。時代の流れとともに、ロストテクノロジーとなってしましまいました。
ちなみに、もう10年くらい前ですが、若いアニメファンと話していた時、アニメにおけるデジタルとアナログの話をしていて、セルアニメのことをアナログ放送のアニメだと思っていた人がいてびっくりした記憶があります。極論、間違ってはいないのですが、セルになじみがない世代は数多くなっているのが事実なんですね。
さて、セル画。線画の魅力が詰まった原画とはちがった、セルならではの美しさがあります。実際にアニメの映像になった素材なので、アニメの一部を手にしている感動もありますし、いい場面やカットのセル画は、それだけで一つの絵画的魅力があるもの。僕がアニメ業界の現場にいたころは、すでにデジタル化されたあとだったので、彩色・撮影の工程はすべてPC上で行われていました。なので実際のセル画に現場で接する機会はなかったのですが、後年入った出版社の下積みアルバイト時代、とある理由でセル画に触れることに。
とある理由とは、編集部の過去の見本誌や資料を保管している倉庫の棚卸作業。1つ1つダンボールをあけたりして、要るもの要らないものを選別していくのですが、その中にセル画があったんですね。もちろん、手袋着用のうえ、指紋をつけないようにして目にしたセル画は、名アニメーター・中沢一登さんのものでした。
過去の雑誌の表紙かカットに使用されたものだと思われるので、実際にアニメに使われたものではないですが、こんな役得があるのかと感動した思い出です。ちなみに、それ以外にもあったのですが、セルの経年劣化で捨てざるをえないものも。しっかりあて紙を入れたりして、丁重に中澤さんのセル画は要保管にしました。
失われた遺産の1つですが、100年先のアニメファンの方にも、数々の名作アニメが作られたセルの魅力を伝えていきたいですね。
※記事にて載せているジャケット画像は、中沢一登さんキャラクターデザインの代表作の1つ、『神秘の世界エルハザード』
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