アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。

 

前回に続いて山田尚子監督の話題です。伝統的な松竹映画の香りがした『たまこラブストーリー』は、とても良い作品ですよ。

 

小津安二郎、山田洋次、そして山田尚子

画像出典:http://images-jp.amazon.com/images/P/B00LNCTX48.jpg

 

『たまこラブストーリー』は2014年に京都アニメーション制作、松竹配給で公開された劇場作品。

 

2013年1月から放送されたオリジナルTVアニメ『たまこマーケット』の続編にあたるも、タイトルが変更されているとおり、TVアニメ版のポップな印象から一転。大人びた表情をしたヒロイン・たまこの描かれたキービジュアルが発表された当時は、どんなストーリーが展開するのかと、注目を集めていました(公式HPのニュースに掲載されている前売りチケットには、このキービジュアルが使用されています)。

 

映画の中心となるのは、商店街で向かい合わせの餅屋同士で、幼いころから一緒に育ってきた、たまこともち蔵。TVアニメ版では描かれなかった、2人の恋のお話が『たまこラブストーリー』では描かれます。

 

高校3年生になったたまこたち。それぞれの進路のことが気になりだす中、たまこはマーチングイベントに向けた練習に取り組んでいく。一方、もち蔵は東京の大学へと進学を決めて、たまこに想いを伝えようとする――。

 

タイトルのとおり、たまこが自分の中の恋愛感情に気づき、それに対する答えのために一歩を踏み出す本作。

 

世界を救ったり大戦闘が起こるわけじゃないけれど、当たり前の日常は変わっていく。みんなが1歩を踏み出していくなか、自分も進んでいけるのだろうかという焦燥。日々何気なく暮らしている自分たちの世界が、少しずつ変わっていくのも、ドラマであり「物語」なんですね。

 

市井に暮らす人々の、傍から見たら小さいけれど、その人にとっては大事な変化。松竹映画は、戦後に小津安二郎監督と山田洋次監督が、そのような作品を伝統的に作ってきました。本作を観た後、その遺伝子は山田尚子監督にあるのではないかと思ったんです。京都アニメーションの培ってきたアニメ制作の方向性と、松竹が大切にしてきた人々の生活描写の合性は、まさにピッタリだったと言えます。

 

それほど丁寧に、人々の暮らしの営みと、繊細な感情の変化を描き、その人たちの人生の変化を「映画」という「物語」にする。山田尚子監督のドラマツルギーに感動しました。

 

もちろん、エンタープライズ山田が、東映や東宝、大映などに比べて松竹が好きという前提はありますが、『たまこラブストーリー』はオススメの作品ですよ。

 

 

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