アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。

 

『リズと青い鳥』が公開されて1週間。ちょっと内容面に踏み込んだお話です。

映画で物語るのは、台詞だけじゃない

 

はじめて『リズと青い鳥』のアフレコ台本を読んだとき、以前のコラムでも書いたように、台詞が少なく、心情表現が丁寧に書かれていることに驚きました。

 

特に映画が始まった冒頭のシーン。

 

リズが自然の中で動物たちと戯れるシーンと、みぞれと希美の登校風景が描かれる中で、朝の静かな学校に響く2人の足音や練習を始める楽器の音などが、静かな世界だからこそ、劇場の音響を通じて観ている我々に対して存在を訴えてくる。

 

そしてアフレコ台本の印象では、新聞を読み折りたたむ仕草を静かに丁寧に描いていた押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のような映像を想起していたのですが、カット割りがテンポよく、描かれている事が静かであっても、映像としては決して退屈させることなく、リズミカルに進んでいくのが最大の特徴です。

 

登校風景や日常の描写を丁寧に描くという点では、同じく京都アニメーションの石原立也監督作『涼宮ハルヒの消失』がありますが、その作品とも描く意図が違っている。

 

『涼宮ハルヒの消失』では、キョンやハルヒが非日常を追い求めながらも、何気なくSOS団の活動をしている日常の価値というものを描いていましたが、『リズと青い鳥』では、よりディープに2人の少女の感情の機微に着目し、言葉では表せないものとして一貫してクライマックスの演奏に繋げています。

 

京都アニメーションがこの15年で描いてきた「そこにいる感」というものの、最先端として、世界・街・部活動という枠組みではなく、あくまで「個」の内部から生まれる感情を主体にしているというところが、本作の見どころの1つだと、感じているんですね。

 

静かだからこそ、引き立つそこに生きるもの、有りしものの音。そしてそこに明確な意思と感情を持って紡がれるのが音楽であり、本作の2人の少女の人生という名の物語である。

 

「リズと青い鳥」は、楽曲であり、童話であり、そして少女たちの感情でもある。

 

ぜひ劇場で本作をご覧いただき、どう感情が変化するのかを感じてみてください。「映画」の真価は、そこにあるのです。

 

 

 

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©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

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