皆さんごきげんよう、ガンダムといえば『∀ガンダム』が大好きなライターの永田多加志です。

 

先に開催された「AnimeJapan 2018」では3月24日(土)と25日(日)の両日、クリエイションセミナーと題してアニメに携わる方々を招いてのトークショーが実施されておりました。

 

私が参加したのは25日(日)に行われた“『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のつくり方”と『GODZILLA 怪獣惑星』を題材にした“「3DCGの現在と未来」について”の2セミナー。扱われた両作品は、ともに3DCGと深い関わりを持ちながら、使われ方やスタンスなどに明確な違いが見られ、大変興味深かったです。

 

本サイトの趣向とも親和性が高いディープな世界! まずは“『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のつくり方”の模様からお届けしましょう。

 

それでは、クリエイションセミナーという名のSWAMP・その1つ目へ、レッツダイブ!

 

 

登壇されたのは、株式会社サンライズに所属する3名の方。プロデューサーの谷口理さんとCGプロデューサーの井上喜一郎さん、本日司会進行を務める中島幸治さんです。

 

まずは中島さんより、そもそも『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』とは、どういう作品であるのかが説明されました。

 

1979年に放映されたTVアニメ『機動戦士ガンダム』(通称・ファーストガンダム)のキャラクターデザインを担当された安彦良和さんが、漫画家として2001年から2011年まで同作をベースにした『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を執筆されており、それを原作にしたOVA作品であること。

 

メインキャラクターの赤い彗星ことシャア・アズナブルを主人公として、彼の生い立ちを第1話(2015年公開)から第6話(2018年5月5日公開)にかけて映像化したものであること、などに触れられました。

 

そして本題です。これまで40年近く『ガンダム』シリーズの作品が展開されている中で、ちょっと違った制作方法がされているという本作。それは何なのでしょうか?

 

▲ユーモアあふれるトークを披露してくださった谷口さん。制作にまつわる面白エピソードの数々に、会場は幾度も沸きました。

 

谷口「3DCGと2Dの作画を共存させる形で、メカや戦艦・モビルスーツ関連をCGで、キャラクターをセル(2D作画)で制作しているんですよね」

 

冒頭で3DCGと関わりが深いと書きましたが、ここが重要なポイントです。全部が3DCGではなく、2D作画との合わせ技で作られているわけですね。

 

では、なぜそういう制作スタイルになったのか。その経緯が語られます。

 

谷口「僕はメカものと呼ばれるアニメを今回初めてやることになりまして、自分自身正直言うと、メカを描くのが得意なアニメーターたちを集められる自信が無かったというのが、まず1つあるんですよね。で、当時井上さんの上司でもある今西さんに相談して……」

 

話題に出た今西隆志さん。本作では第1話から第3話の監督をされていた方です。『機動戦士ガンダム0083』の監督としても有名ですが、近年では『機動戦士ガンダム MS IGLOO(イグルー)』など3DCGに重きをおいた作品に参加してこられました。

 

谷口「たぶん今西さん、もともとやる気だったんだと思うんですけど、今回モビルスーツを3DCGで描いてみようかと。できるだけセルルックというか、セルに負けないような見え方ができるようにやってみようか、という風に話をしたことが、きっかけかなと。今西さんじゃなければ、3DCGじゃなかったかもしれない」

 

最初から3DCGありきだったのではなく、3DCGに造詣の深い方が監督になったことで、そういう流れになった、というわけですね。

 

そして谷口さんは、3DCGに詳しいという条件のもと、スタッフの選定を行います。メカ総作画監督の鈴木卓也さんと総作画監督の西村博之さんは、こうした方向性の中で起用されたとのこと。

 

▲セミナーでは、メカニックデザインのカトキハジメさんが作画打ち合わせのために用意した作業映像も特別公開。カトキさんの肉声が聞けたことで、往年のファンの参加者は歓喜でした!

 

ところで『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のアニメ化にあたって、ファンの間で驚きをもって迎えられたこととは何でしょう? それは原作漫画を手がけた安彦良和さんご自身が総監督として、約25年ぶりにアニメの現場に復帰されたということです。一方でそれは、ブランクのある安彦さんが、現状の3DCGについてご存じないということも意味していました。

 

谷口さんは「今こういうのはCGでやるんですよ、と頭ごなしに言ってはいけない」と参考用のアニメを用意し、きちんとメリットとデメリットを話した上で改めて「やりたい」と安彦さんを説得しにかかられたそう。安彦さんの返事はというと、

 

「うーん、僕あんまりメカにね、興味ないから。(作業が)楽になるならいいよ」

 

とあっさりしたもの。

 

つまり安彦さんにとって、当初CGとはその程度のものだったわけですね。しかしこの話には続きがあるようで……。

 

谷口「(これをきっかけに安彦さんは)もう目覚めちゃって。なんでもかんでもCGにしろっていう風に言い始めちゃって。エラいこと覚えさせちゃったなと思いましたね」

 

安彦さんに関しては、こんなエピソードも。

 

谷口「板野さんにね、勝手に絵コンテの発注をしちゃったんです」

 

板野一郎さん。『超時空要塞マクロス』などを代表作に持ち、立体的な高速戦闘アクションによる曲芸さながらの作画「板野サーカス」で名高い演出家兼アニメーターです。安彦さんは、当時バイク事故で入院されていた板野さんのお見舞いに行かれたのですが、なぜか絵コンテの依頼をして帰って来たとのこと。

 

板野さんは、本作第1話の「ルウム戦役」シーンの演出を担当されていますが、これがきっかけだったとは驚きですね!

 

▲井上さんはモニターを使いながら、丁寧に説明してくださいました。専門的な内容を分かりやすく伝える話術にも、脱帽!

 

話は次のフェーズに以降します。2Dと3DCGの共存とは具体的にどういった連携であるのか? これについては井上さんから、画面を用いて詳細な説明がなされました。

 

 

井上「作画、CG、美術と大きく分けて3つのセクションがあり、総合的にやり取りします。で、そういった素材を撮影に回して、最終的な絵にするのです。(アニメは)すべてこの連携で成り立っているのですが、中でもCGと作画の連携が強いカットがあったり、CGと美術の連携が強いものなど、いろいろあるんですね」

 

さらにアニメに先立ってもう1つ、メカ打ちと呼ばれる作業があるとのこと。CGを使ったプラモデル化に際して、デザインの整合性をどう付けるかなどを、メカデザイナーさんやガンプラを販売するバンダイの担当者さんを交えて話し合うのですね。以上のことを踏まえると、連携の種類は4つに大別できるようです。

 

 

1つ目はメカデザインとCGの連携です。最初に見せていただいたのは、「補給艦パプア」のラフとモビルスーツ・ザクの対比表。これを使って、サイズ感を決めていくのだとか。

 

井上「ザクが18メートルとして、パプアの全長約300メートルの中に何機積めるのかというのを検証していきます。実際計算してみると、格納庫に片側12体、両方で24体乗ることが分かったので、(それを元に)デザインしてCGに起こし直すのです」

 

 

井上「最終的にスペックという形で設定化されます。CGで起こしたモデルを採寸するので、全長何メートルかなどの数値は『THE ORIGIN』ならではの設定ということが、特徴かもしれないです」

 

精緻を極めたメカデザインは、CGベースならではと言うわけですね。

 

2つ目は作画とCGの連携。こちらはたくさんのパターンを紹介していただいたのですが、その中から2つほどピックアップしてお伝えしましょう。

 

 

ご存知シャア専用ザクのラフ原画と、それ元にCG化されたものです。

 

井上「(写真のラフ原画は)静止していますけど、実際は動いています。これに合わせてCG画にしていきます。最終的な絵に仕上がるまでに、作画さんの方で、例えば頭の大きさをもうちょっと小さくしてほしいとか、コマの割り方を変えてほしいとか、さまざまな修正指示が入るというのが、大きな連携です」

 

 

そしてもう1つ。

 

井上「作画のエフェクトをCGと混ぜるということを、増やしてきました」

 

画面には、宇宙戦艦マゼランの打ち上げシーンが映し出されます。

 

井上「手前の煙が作画で起こされていて、奥の方の噴射や煙は3Dということで、挟みこんで馴染ませていく。お互いの素材をやり取りして連携しています」

 

 

3番目は背景美術とCGの連携です。映されたのは手描きの美術ボード。アムロが父親であるテムの部屋に迷い込むシーンで、アムロの目から見た室内の様子です。

 

井上「安彦さんの方から、この中をぐるぐると見回したいということで、CGで背景のモデルを起こしました」

 

 

井上「最初に絵コンテを参考にCGからカメラワークを決めました。それでOKをいただいてから、そのアングルに合わせて美術を描いていただき、CGの立体モデルに合わせて美術を切り張りして焼き込む形です。するとカメラが回り込んでも大丈夫と」

 

 

Dモデルによるアングルの変わったCG映像に切り替わります。先程アムロ視点だった室内の様子が、今度は室内からアムロを見る構図に変化したことがお分かりいただけるでしょうか。こちらも同様に、3Dに合わせる形で背景美術を描き込んでいくとのこと。

 

井上「3方向から焼き込んで、ぐるっと(カメラを)回しても遜色のないように立体化しました。これは美術とCGのかなり密な連携かなと思います」

 

 

4つ目は作画と撮影とCGの連携です。シャアが突撃するシーンを使っての説明となりました。

 

井上「作画のラフ原画を起こしていただいて、それにコクピットの描写を絵に合わせてCGで配置します。それぞれレイヤーに分けた素材を合わせて出力し、(次の)撮影の段階でグラデーションやモニター処理を乗せて、最終段階に仕上げていくと」

 

おおよそこの4パターンを組み合わせて作っていく、とまとめられて、井上さんの説明は終わりました。

 

……実にディープです。心の中で何度「へぇ」と呟いたことか。しかし本当の意味で凄いのは、これだけ専門的な内容を、素人の我々にもちゃんと理解できるように話してくださっているということ。

 

 

終盤は質疑応答です。「何でも訊いてください」と壇上のお三方が心遣いを見せる中、参加者のひとりが核心をついた質問を。

 

「今後こういったアニメで、CGを使った描写などは、どう変わっていくと思われますか?」

 

井上「作画の映像美を(CGで)再現していく方向で進んでいくというのが1つと、もう1つはリアルな見た目のフルCGによるアニメーションにも振っていく。僕は基本的にその2系統で考えて、これからも作っていきたいと考えています」

 

谷口「プロデューサー目線でいうと、(CGは)ツールでしかないと思っています。基本面白ければ、2Dで描こうが3Dで描こうがどっちでもいい。だから作品によって変えていくべきで、どちらも共存していくべきかなと」

 

井上さんはCGの専門家という立場から技術がアニメにもたらすものの展望を語られ、谷口さんは全体を総括する立場から、アニメ制作におけるスタンスを語られた形です。立場が異なることで着眼点も異なることを、興味深く拝見しました。

 

▲質疑応答のコーナーでは、安彦さんがTVアニメのOP「翔べ! ガンダム」を『THE ORIGIN』の主題歌にする、と言い出して困ったという逸話も。

 

5月5日(土)より『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』第6話にして完結編『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 誕生 赤い彗星』が、全国の映画館35館にて4週間限定で公開されています。

 

締めの挨拶では、当然ながら井上さんも谷口さんも「観てください」と宣伝されましたが、セミナーの中で幾度となくお2人の「期待して欲しい」という発言を耳にしています。強いプッシュは確かな自信に裏打ちされてこそのもの! 皆さん是非、劇場のスクリーンでご覧ください。もちろん私も観ます!

 

さて、先述のとおり私が参加したセミナーは、もう1つあります。『GODZILLA 怪獣惑星』を題材にした、“「3DCGの現在と未来」について”です。2Dと3Dを融合させた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に対し、こちらの作品はフル3DCGという技法を用いていることが特徴。スタッフさんが、またひと味違ったディープさについて語られていたこちらのセミナーも、レポート記事をお届け予定です。乞うご期待!

 

では、そろそろ地上への帰還を果たすことに致します。また別のSWAMPにて、お会いしましょう!

 

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』公式サイト:http://www.gundam-the-origin.net/

 

 

■「AnimeJapan 2018」関連ページはこちら

 

「AnimeJapan 2018」開催概要

 

催事名称: AnimeJapan 2018
会場: 東京ビッグサイト (〒135-0063 東京都江東区有明3-10-1)
東展示棟 東1-8ホール [メインエリア]
会議棟1Fレセプションホール [ビジネスエリア]

 

メインエリア会期: 2018年3月24日(土)・25日(日)
会期時間 10:00~17:00 ※最終入場16:30
ビジネスエリア会期: 2018年3月22日(木)・23日(金)
会期時間 10:00~17:00 ※最終入場16:30

 

 

 

公式サイト: http://www.anime-japan.jp

 

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