皆さんごきげんよう。『GODZILLA 怪獣惑星』の脚本家・虚淵玄さんは映画『リベリオン』の同人ゲームを作ったことがある! ……というトリビアを後輩に信じてもらえないライターの永田多加志です。本当なのに~。

 

さて、3月に「AnimeJapan 2018」にて開催された、アニメ関係者の方々による複数のトークショー「クリエイションセミナー」。私は25日(日)に行われた2つのセミナーに参加いたしました。前回紹介しました『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のつくり方に続き、今回は『GODZILLA 怪獣惑星』を題材にしたもう1つのセミナー“3DCGの現在とアニメの未来について”の模様をお届けします。

 

題材となっている『GODZILLA 怪獣惑星』は、ポリゴン・ピクチュアズ制作によるアニメーション映画『GODZILLA』シリーズ3部作の第1作目で、20171117日に劇場公開されました。

 

地球最強の存在となった怪獣・ゴジラに挑む人間たちの姿を、異星人種や恒星間移民船、パワードスーツなどのSF要素とともに描いた作品です。

 

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』共々3DCGと深い関わりを持ちますが、同作が2Dとの連携という技法を用いたのに対し、こちらは全編フルCGになっていることが特徴。もちろん両者に優劣はありませんが、この違いの中に『GODZILLA怪獣惑星』ならではディープさも存在するわけです。そのあたりもご覧いただきましょう。

 

それでは、クリエイションセミナーという名のSWAMP・その2つ目へ、レッツダイブ!

 

 

最初に登壇されたのはアニメ評論家の藤津亮太さん。本日の司会進行を務められます。

 

藤津さんの呼び込みにより、『GODZILLA 怪獣惑星』を制作したポリゴン・ピクチュアズのスタッフ3名、監督の瀬下寛之さん、造形監督の片塰(かたあま)満則さん、CGキャラクターデザインの森山佑樹さんがステージに登場します。

 

 

監督の瀬下さんは「声優さんのイベントじゃないのに、こんなにたくさんの方に来ていただいてありがとうございます」と挨拶されて、会場の笑いを誘いました。

 

 

造形監督の片塰さんも「お花見日和にも関わらず、こういうマニアックな話を聞きに、たくさんの人に集まっていただいて嬉しく思います」と謙遜されます。

 

 

CGキャラクターデザインの森山さんはオーソドックスに、「今日は楽しんでいただければと思います」とコメントされました。

 

まずここで藤津さんが、我々素人の立場に立った質問で切り込んでいきます。

 

藤津「瀬下さんは監督ということになるのですが、片塰さんの造形監督と森山さんのCGキャラクターデザインというのは(あまり馴染みが無いので)どういった役割なのかを簡単にご説明いただけますか?」

 

瀬下「(最初に)絵を描くじゃないですか。それを3Dとして立体にすると、造形の辻褄が往往にして合わないことがあるんです。それを解釈し調整する人が造形監督です」

 

二次元である絵を、実際に三次元として成立するように完成させるお仕事というわけですね。ではCGキャラクターデザインとは?

 

瀬下「キャラクターの原案がどれほど素晴らしいとしても、やはりこれも3DCGにするといろいろ都合が合わなくなります。そこを解釈し、成立させるのがCGキャラクターデザインです」

 

なるほど、分かりやすいお答えです。「この役割をざっくり頭に入れておくといいかなぁ」と瀬下さん。我々聴衆にも、ちゃんと話についていけそう、という安心感が生まれますね。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のつくり方の時もそうでしたが、専門的な内容を理解しやすいように話してくれるところに、スタッフさんたちの心遣いを感じました。

 

そして藤津さんより、セミナーの具体的な構成が説明されます。前半を『GODZILLA』シリーズのキャラクターが出来上がるまでと、後半を怪獣ゴジラが出来上がるまでの2種類に分けてお話を伺うとのこと。

 

さっそくキャラクターについてのトークがスタートしました。モニターにはキャラクターデザイン原案のコザキユースケさんによる、主人公・ハルオの設定イラストが映されます。

 

 

森山「今回キャラクターの裸の絵で体格を表して、顔のデザイン、表情も(イメージをつかむ意味で)こんな感じかなーと」

 

藤津「服を着ていない(設定まで用意する)のは、珍しいですね」

 

森山「3DCGの都合でもあったりします。キャラクターに服を着せる前に、本当の素体はどういう形をしているのか、というのをはっきりさせる(ところから始める)のが流れなので」

 

早くもこだわりの一端をうかがわせる発言が飛び出しましたね!

 

続いてモニターには、メインヒロイン・ユウコの設定イラストが。こちらもコザキさんが描かれたものだそうです。

 

 

ここでは、ユウコのカチューシャにまつわるこぼれ話も。

 

瀬下「一味欲しいという話になって。ユウコがストーリー上、ちょっと控え目なんですよね。キャラクターが立たないといけないんで、カチューシャ型デバイスを (視覚的な印象を強めるために)付けることにしました」

 

さらに森山さんより、注目ポイントが語られます。

 

森山「ハルオもそうなんですけれども、キャラクターの目をつむっているところも、一緒にあげてもらっているんですね」

 

ユウコのイラストをよく見てみると、なるほど閉じた瞼に透けるように目が描かれているのが分かりますね。「こういうところも3DCGならでは」なのだとか。

 

 

話は少し専門的になります。ここでルックデブ(ルックデベロップメント)と呼ばれる工程について、説明がされました。

 

片塰「モデリングは人形で言えば素体(塗装する前の状態)のことで、立体としてどういう形にするかという工程です。ルックデブは、ルック(見た目)をデベロップ(開発する)、という意味。質感(を生み出すこと)ですかね」

 

片塰さんは、髪の毛のハイライトを例に出しました。今回髪の毛の光沢を、模様のように貼り付けるのではなく、ライティング(光のあたり方)に応じてハイライトが出たり消えたりするような仕組みにしているのだとか。

 

 

さらに角度の大切さについても触れられます。モデラーさんが作った立体物に対して、どのような調整をお願いするか示したイラストを使っての解説となりました。

 

片塰「画の上にはちゃんと角度を数字で書いてあるんですよ。130度、186度みたいに。カメラに対する顔の向きという大事な情報を(添えた上で) 得たいと思っています。この角度で見たときの、この部分が、こんな風に見えるように直してください、ということですね」

 

瀬下「ライティングにはこだわりたいんです。しかし、それは三次元的造形のハードルを上げることでもあり、(話はいつも)ライティングにこだわりたいから(角度などさまざまな問題を)なんとかしようになる」

 

片塰さん森山さんも、瀬下さんと同じ考えのようで、この言葉の中に制作チームの共通理念を感じ取れた気がします。

 

 

最終的にルックデブを経たものがこちら。髪の質感や光の入り方などのさまざまな要素が取り入れられ、ガラッと印象が変わったのが分かりますね。

 

 

いよいよ、お待ちかねの怪獣・ゴジラにまつわる話になります。「僕は無邪気にやりたいことを伝える係だから」と仰る瀬下さんの思い付きを集めた、デザインの指示書が映し出されました。

 

瀬下「最初、ご神木が歩いているみたいにしたいと話したら、(皆から)はぁっ? って言われて」

 

これには会場からもドッと笑いが起きました。ただもちろん、冗談だったわけではありません。瀬下さんの意図を片塰さんが代弁します。

 

片塰「生物学に基づいた考証による爬虫類的なデザインは、ハリウッド版のゴジラがかなり取り入れているので、もう少し神話的なゴジラにしようと。それで植物というアイデア(が出てきたん)ですね」

 

片塰さんはちょうど植物の写真集を持っていて、トゲとか不思議なフォルムをした種などに興味を引かれていたのだとか。そういう植物の中の面白い形を組み合わせたらいいかな、とプランを立てられたようです。

 

 

画面に映されたのは、ゴジラの顔のボツ案を集めたもの。どこまで特徴付けるか試行錯誤されたとのことで、実際は物凄い数の候補が描かれたようです。

 

片塰「イグアナ的なもの、ライオンとか哺乳類、草食動物っぽいもの。あごひげを付けたものとか、いろいろ探っている(時の)ものですね」

 

藤津さんは本作のゴジラについて「昭和ゴジラと比べて、目がちっちゃくしてあるなと感じた」と指摘されます。

 

瀬下「当初プロデューサーから、(ゴジラが)おじいちゃんみたいと言われました。怖いけど(目が)優しいって。僕らの中では狙い通りで、(意図が伝わって)あぁ良かった良かったと」

 

片塰「野獣(ビースト)ではない、ということを確認できた感じですね」

 

 

顔の次はゴジラの身体に関する話になります。初期に描かれたスケッチを使いながらの解説となりました。

 

片塰「ヘラクレスのように西洋的な筋肉の造形ではなく、仏像の金剛力士像みたいに日本的な、力強い造形の感じにしたいなと」

 

ここでも藤津さんが「太もものシルエットが大きいせいか、足が長く見える」と的確な指摘をされます。

 

瀬下「理由が2つあって。凄くゆっくり威厳を持って歩いているんだけど、本気出したら足が速いんじゃないかという風に思わせたかった。もう一つは力士の方って実は意外と足が長いんですよね。そういうイメージもゴジラに持たせたかったんです」

 

ご神木や仏像、力士などのキーワードを聞くに、本作のゴジラ像は日本的なものを強く意識していると言って良さそうです。

 

 

コンセプトが定まったところで、いよいよ3Dのモデリング作業です。まさに粘土をこねて形を作るイメージですが、実物ではなくコンピューター内のバーチャルな粘土を使って行うとのこと。専門用語で「スカルプティング」というそうです。

 

片塰「植物的ということで(身体の)表面はツルのような、もしくはヤクスギのような樹齢の長い巨木のような感じにしています。ただゴジラはあくまでも動物なので、体組織に見えるように、筋肉繊維の流れを意識して、それを立体の上で確認しながら作っていきました」

 

 

立体ができると、ルックデブの工程に入ります。キャラクターデザインの時と同様、質感や見た目のスタイルを考えていくわけですね。

 

片塰「ライティングしたときに、影の分量はこれくらいあるといいなとか。監督のアイデアである苔むした感じとか、細かい傷の入り方みたいなものを(表現していく)」

 

写真では分かりにくいですが、ゴジラの背中や肩の上など、ちゃんと障害物と擦れない部分だけに苔が生えている仕様になっています。さらに表面の所々に青みがかがっていることにも理由が。

 

瀬下「設定的に(ゴジラが)金属の元素を大量に含んでいるんです。巨大なコイルとかワイヤーの束とかの感じにしたくて、濃いめのブルー系に」

 

片塰「(体内を)電気が通っているということで、尻尾なんかは筋肉というよりも、ケーブルの中にあるシールドのような金属繊維が編みこまれたような形で表現しました。コイルやコンデンサーような電気部品を思わせる造形にしたくて」

 

尻尾についてはこんなエピソードも。片塰さんが動物の解剖学に詳しい先生に、尻尾の筋肉はどうなっているのか訊ねたところ、「実はよく分かっていない」と驚きの答えが返ってきたのだとか。結果、ゴジラの尻尾は動物的なものではなく、機械的なものにするという方向に決まったそうです。

 

 

ラストは、来る5月18日(金)に公開されるシリーズの第二章『GODZILLA 決戦機動増殖都市』の宣伝に絡めて、お三方からメッセージを頂きました。

 

森山「キャラクターからゴジラから設定の嵐なので、劇場に来て作品を楽しんでも貰いたいんですけど、(それだけじゃなく)裏側もどんどん掘っていっていただきたいです」

 

片塰「デザインはただ飾りとしてやっているわけではなく、物語を表現するための必然的な形、質感、構造をできるだけ出そうとします。(言わば)物で語るためのデザインが、二章三章でどんどん登場しますので、楽しみにしていただければと思います」

 

瀬下「(脚本の)虚淵さんによるストーリーは、僕自身、会議でえっ!? となった驚きの展開が待っていますので、是非劇場でご覧ください」

 

 

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のつくり方との対比という側面もあった本セミナー。

 

徹頭徹尾3DCGであることもあり、『THE ORIGIN』以上に専門性の強い内容ではありましたが、思った以上に分かりやすい内容でした。これまで3DCGに対して「とにかく凄いらしい」程度の認識だった私も、その具体的な魅力の一端を理解できた気がします。

 

GODZILLA 決戦機動増殖都市』は、セミナーで得た知識を踏まえて、ちょっぴりディープな楽しみ方ができそうです。本レポートをお読みいただいた皆さんも、是非劇場に足を運んではいかがでしょうか。

 

では、そろそろ地上への帰還を果たすことに致します。また別のSWAMPにて、お会いしましょう!

 

『GODZILLA 決戦機動増殖都市』公式サイト:http://godzilla-anime.com/smph/

 

 

■「AnimeJapan 2018」関連ページはこちら

 

「AnimeJapan 2018」開催概要

 

催事名称: AnimeJapan 2018
会場: 東京ビッグサイト (〒135-0063 東京都江東区有明3-10-1)
東展示棟 東1-8ホール [メインエリア]
会議棟1Fレセプションホール [ビジネスエリア]

 

メインエリア会期: 2018年3月24日(土)・25日(日)
会期時間 10:00~17:00 ※最終入場16:30
ビジネスエリア会期: 2018年3月22日(木)・23日(金)
会期時間 10:00~17:00 ※最終入場16:30

 

 

 

公式サイト: http://www.anime-japan.jp

 

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