アテネ・フランセ文化センターとユーロスペースとの共同プロジェクトとして1997年にスタートして以降、これまでに多くの映画人を輩出してきた映画美学校。過去にSWAMP(スワンプ)で取材した『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督や、『海を駆ける』の深田晃司監督も同校の卒業生です。

 

▲高橋洋さん

 

このたび「脚本コース」第9期初等科(前期:4月26日〜10月5日)の開講に先立ちオープンスクールが行われ、同クラスの主任講師を務める脚本家・映画監督の高橋洋さん(中田秀夫監督『リング』シリーズほか)、日曜昼クラスの担当講師である金巻兼一さん(大森貴弘監督『夏目友人帳』ほか)、金曜夜クラスの担当講師である宇治田隆史さん(熊切和嘉監督『私の男』ほか)が登壇。映画美学校の脚本コースでは何が学べるのか、といった講座の概要から、各クラスの特長などについてお三方によるガイダンスが行われました。

 

▲宇治田隆史さん

 

▲金巻兼一さん

 

SWAMPでは、オープンスクールを終えたばかりの金巻さんと宇治田さんを直撃。普段なかなか聞けない「そもそも脚本家とはどういうお仕事?」といった基本的なことから、「脚本家になるためには?」「いざ脚本家デビューを果たしたあとは?」といった実践的なことまで、根掘り葉掘り伺ってきました。前後編にてたっぷりお届けします!

 

そもそも脚本家とはどういうお仕事?

 

ーー先程のオープンスクールでは、「脚本は映画やアニメの『設計図』である」というお話も出ましたが、脚本家とは作品の中でどのような役割を担っているのでしょうか。監督やプロデューサーとタッグを組んで、映画の土台を作るという感じですか?

 

宇治田隆史(以下、宇治田):まさに土台作りですね。現場にもよるとは思いますが、僕の場合は監督と話すことが多いです。

 

金巻兼一(以下、金巻):メディアによっても立ち位置が変わってきますが、映画の場合、監督との二人三脚である場合が多いですよね。一方、TVの場合は厳然と尺や撮影期間、制作期間などのしばりがあるので、最初に脚本家がしっかりと書いておかないと、あとが大変なんです。

 

ーーTVと映画の一番大きな違いとは?

 

宇治田:映画の方も監督やプロデューサーからの注文がありますが、比べるとTVは制約が多いですよね。

 

金巻:関係各所がTVの場合は多いから、既にみんながOKしているものを現場で変えにくいという事情も若干あります。脚本を書く時点で尺も計算してあるので、そこからさらにイメージを膨らませるわけにもいかないし。だからこそ、TVには倉本聰さんや山田太一さんのようなスター脚本家が誕生するんです。アニメや実写を問わず、TVは演出家がシリーズや話数ごとに変わることも多いので、必然的に脚本家の影響力が大きくなる傾向にありますね。映画の場合も、力のある脚本家と監督やプロデューサーが組んだ場合は、あんまり周りからいろいろ言われない(笑)。脚本家から監督になる人も多いですしね。

 

ーー脚本コースの授業では、企画開発から学ぶとのことでしたが、実際の現場では?

 

宇治田:今は企画ありきであることの方が多いですね。原作がまず決まっていて。

 

金巻:具体的に「原作がこれだけ売れているから」というプレゼンテーションもできるので、原作モノの方が企画を通しやすいんです。オリジナルの場合は「失敗した時に誰が責任を取るのか」という話になってくるので、どちらかというとマイナス発想にはなりますよね(笑)。

 

ーー守りに入らざるを得ない、ということですか?

 

金巻:そうなんですよね。『地獄少女』※1という作品は完全オリジナルですけれど、当時のプロデューサーが「これをやる!」と言ってくれたから、実現できた企画なんです。オリジナル企画を通すのって、かなり難しいんですよ。

 

※1:2005年に第1期が放送され、現在第4期まで制作されているTVアニメ。「地獄通信」に怨みを晴らしたい人物の名を書き込むと、地獄少女が現れて憎い相手を地獄に流してくれるというストーリーだ。金巻さんはシリーズ構成と脚本を担当。

 

ーー宇治田さんは大阪芸術大学の学生時代に、熊切和嘉監督が卒業制作として発表した『鬼畜大宴会』に関わられたのが原点になりますよね。先程のオープンスクールでも「まずは自分自身や、自分の好きなものに立ち返るところから始める」というお話をされていましたが、脚本執筆にあたって常にそこが起点になるということですか?

 

宇治田:そんなに意識はしていなかったんですけれど、結局そうなりますね。「自分自身が楽しめるもの」というところから始まっていましたから。僕の商業映画デビュー作は田口ランディさん原作の映画『アンテナ』(熊切和嘉監督作品)になりますが、「自分は何を感じて、それをどう形にしていくか」が大事なので。

 

ーー脚本を書く上では「主観が大切」というお話も先程されていましたが、その一方で「脚本はあくまでスタッフに伝えて映像化するためのもの」という話題も出ていました。つまり、あくまでも「自己表現」とは別のものになるということですか?

 

金巻:「主観」といっても、自己表現のための主観ではないんですよ。そのキャラクターを活き活きとさせるために、「なりきる」ことが大事なんです。キャラクターが10人いたら、それぞれが主観を持って生きているわけですから。

 

ーーつまり、脇役はいないということですか?

 

金巻:そうです。たまたま脇役という立場になっているだけですから。そこがわかっていないと、すべてのキャラクターがちゃんと動いてくれないんです。

 

ーーすべてのキャラクターが自分なんですね。

 

金巻:自分でもあるんですが自分ではない、という微妙な塩梅で……(笑)。

 

宇治田:そうですね、難しい説明になりますね。どうしたって他人にはなれないですからね。

 

 

◆次ページ:実践的な脚本の書き方・アニメ編

 

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