実践的な脚本の書き方・映画編

オープンスクールで講義をされる宇治田さん。

 

ーー宇治田さんにも原作モノとオリジナル脚本の書き方の違いについてお伺いしたいのですが、一般的に原作モノの場合は「脚色」という表現を使いますか?

 

宇治田:原作ありきで脚本を書く場合は、基本的には「脚色」と言うことが多いですが、僕の場合そこはわけていないです。あくまで原作は土台という捉え方ですね。

 

金巻:原作を「壊す」わけではないんですよね。原作を読み込んで「ここだ!」というポイントが見えたら、そこを起点にして脚本に起こしていく。

 

ーー脚本家にはどの程度「自由」が与えられているものなんですか?

 

宇治田:それは原作者にもよるし、制作会社にもよりけりですね。

 

金巻:小説でもマンガでも、実写映画になると多少緩くはなりますよね。

 

宇治田:いや、結構ダメでしたよ(苦笑)。準備稿の段階まで進んでいたのに、原作者がOKしてくれなくてお蔵入りになったこともあります。

 

ーーそれは、原作に大幅な変更を加えたからですか?

 

宇治田:原作を2時間の映画の尺におさめるためには、どうしてもエピソードを取捨選択する必要があります。でも、こちらで削る判断をした箇所が原作者にとって特に思い入れのある箇所だったりすると……。

 

——あぁ、なるほど……。

 

金巻:僕はその溝を埋めるために、原作者と直接会ったうえで、編集者経由で文章のやり取りをするようにしていますね。まずはメールで原作の所感を伝えて、物語の核を確認する。映像化する場合、原作に穴があることもあるので、その場合は「ここはこういう風に変えようと思います」と伝えます。もちろん「穴を埋める」と言うと怒られちゃうので、そこは言葉を選びますが(笑)。原作者自身に「OKを出している」ということを自覚していただいた上でことを運んでいけば、まずモメないですね。だから原作モノをやる場合、僕は最初が長いんです。

 

ーー立ち上がるまでに慎重を期す、ということですね。

 

金巻:アニメの場合は原作者が脚本打ち合わせにも来るので、そもそもそこで確認を取ってないと、打ち合わせの場で突っ込まれてしまうことになりかねないので(笑)。

 

ーー最近では、原作者が自ら脚本も担当するケースが見受けられますが、宇治田さんの場合はいかがですか?

 

宇治田:お会いするとしても脚本が完成してからです。もちろん原作者も脚本には目を通していて、そこで言ってくる人もいますし、何も言わない人もいる。もしくはプロデューサーが止めてくれているケースもありますから。

 

ーー逆に原作が短編の場合は、どうやって膨らませていくのでしょうか?

 

宇治田:原作を読んで受け取ったものを、もう1回別の脚本として伸ばしていくということですね。印象を再現する感じです。

 

ーー場合によっては、設定自体を変えてしまうこともありますか?

 

宇治田:そういう場合もありますね。短編の場合、ただ単にストーリーを引き延ばしても、面白くはならないです。まったく新しいキャラクターが登場することもあれば、展開が変わることもあるし、仕上がりがまったく別のものになることもある。だからこそ「印象の再現」という言葉を使うわけです。

 

ーープロットをもとに初稿を作成する段階で肉付けしていくのでしょうか?

 

宇治田:中には「主役がこの俳優に決まりそうなんだけど、彼はこのセリフが嫌いらしいから変えてくれ」という場合もあったり、人気のキャストを押さえるのに「50代の設定だけど、どうにかして20代にならない?」と相談されることも……(笑)。

 

金巻:日本に限らず、欧米でもそういったケースは多いですね。最近は「この人にやってもらえばヒットするから」って言われることもありますから。

 

ーー具体的には、脚本家は映画のどの段階から関わることが多いのでしょうか。

 

宇治田:まずプロットの段階で提出して、それをもとにした企画書ができたら原作者にお伺いを立てて、「これで進めますね」となったら初稿を書き上げて、それをもとに確認を取る。という流れですね。

 

ーープロットや企画書も脚本家が書くものなのでしょうか?

 

宇治田:プロットは僕が書く場合もあれば、プロデューサーの場合もありますね。監督が書く場合もありますが、だいたい脚本家かプロデューサーのどちらかですね。

 

ーープロットで出資を集めるということですか?

 

宇治田:結局プロットでは集まらないんです。

 

ーーキャストも決まらない?

 

宇治田:「なんとなくこれで行けそうだけど、ちょっと保留ね」となるケースがほとんどなので、結局のところ「まずは初稿を書け」と言われます。

 

ーーまずは(笑)。でもかなりリスキーですよね。

 

宇治田:初稿でストップということもありますからね。

 

ーーそういう場合でもギャランティはもらえるんですか?

 

宇治田:もらえます。

 

金巻:潰れる可能性がある以上は、そこで精算するシステムを作っておかないと仕事にならないので。映画の場合は特に実現するまでに時間がかかりますからね。極論、TVシリーズの(脚本)1本だったら1週間でなんとかなるわけですが、映画だとそうはいかないですから。

 

ーー「アテ書き」という言葉もありますが、たとえキャストが決まっていないタイミングでも、脚本を書いている時にはある程度ご自身の中で役者を想定しているものですか?

 

金巻:人によるのでしょうが、僕はまったくないです。あくまで作品に対して誠実であろうとするだけなので。

 

宇治田:僕もないですね。中には最初から主演が決まっている場合もありますが。

 

金巻:その場合、宇治田さんはどのくらいキャラクターを本人に寄せます?

 

宇治田:過去に主演が決まっている作品があったのですが、あまり気にしないようにしていましたね。

 

金巻:役者の方からしてみたら、今までとは違うキャラクターを演じる方が面白いはずですよね。アテ書きされるということは、今までやってきたことと同じになってしまうので。

 

ーー現場で「アドリブ」があったかどうかは、脚本家はどの段階で知るんですか?

 

宇治田:最後ですね。あらかじめ聞く場合もありますけど。

 

金巻:映画の場合はどうしても現場判断が多くなりますものね。いざ現場に立ってみたら「このセリフじゃないじゃん!」っていうこともあれば「(セリフを)言わせてみたらこの役者じゃ無理じゃん!」ということもあって。

 

ーーアドリブ以外にも、撮影の都合でシーンが無くなったり、構成が変わってしまうこともありますか?

 

金巻:中にはそういうケースもありますが、稀です。普通はそこまでやってしまうと成り立たないですよね。

 

宇治田:三池(崇史)監督の場合は?

 

金巻:三池さんの場合は特別ですよね。現場のスタッフが臨機応変に動いてくれるので。『DEAD OR ALIVE 犯罪者』3 でもラストの有名なシーンがありますよね。

 

※3:1999年に三池崇史監督、哀川翔さんと竹内力さんの主演で制作されたバイオレンス・アクション。その衝撃的なラストシーンによって、現在でもカルト的な人気を誇っている。

 

宇治田:脚本では普通のVシネマみたいな話だったらしいですよね。

 

――普通に対峙して撃ち合っていると。現場の飛躍の極地ともいえる作品かもしれないですね。

 

宇治田:あれで決まったようなものですよね。

 

ーーそもそも脚本を書いている段階から、具体的なシチュエーションは頭に浮かんでいるものですか?

 

金巻:そりゃ浮かばないと書けないですよね。

 

ーー脚本執筆時には、特定の俳優を想定するわけではなくとも、漠然としたイメージがある感じですか?

 

宇治田:本当に質感が頭の中にある状態ですね。質感が笑ったり怒ったりしているっていう。

 

ーー不思議ですね。

 

金巻:具体的に書いてはいるんだけど、実は具体的じゃないっていう(笑)。

 

ーー難しい(笑)。

 

宇治田:抽象ですよね。

 

ーー抽象のまま動かしていくことは可能なんですか?

 

宇治田:完成するまではずっとそんな状態で動きます。それこそ音や台詞も実際には聞こえているわけではないのに聞こえてくるとか、すべてが印象ですよね。

 

ーーなんとかその感覚を掴みたいのですが、「黙読」の感じに近いのでしょうか。

 

宇治田:オカルトチックな気がしますけど、幽霊の声が聞こえ続けているような。声と認識していますが、なんなのかわからないですね。実際の音ではないわけですから。

 

金巻:それこそ女性の台詞を書いている時も、我々が自分で読んでその気になっている(笑)。

 

宇治田:きっと彼女はこんな声なんだな、と。

 

ーー脚本を書き進めていく上ではディテールから決めて行った方が早いというお話もされていましたが、「ディテール=具体」というわけでもなく?

 

金巻:具体的と言いながら具体的じゃないと言うレベルなんです。

 

宇治田:だんだん詰めていくと具体にはなるんですけど、あくまでも最初は「具体のような抽象」なんですよね。

  


 

インタビューは後編に続きます! 後編では、「脚本家になるためには?」「脚本家になってから、どうやって食べていく?」といった脚本家のリアルに迫ります!

 

◆後編はこちら

 

高橋洋さんを筆頭に、今回お話を伺った金巻さんや宇治田さんといった、第一線で活躍する講師陣から直接学べる映画美学校「脚本コース」では、脚本の勉強のみならず、実際に自分たちで映画制作を体験してみる、といった映画美学校ならではのカリキュラムも用意されています。興味を持たれた方は、ぜひ次回のオープンスクールに参加してみてはいかがでしょうか。詳細は下記公式サイトにて!

 

 

映画美学校公式サイト:http://eigabigakkou.com/

 

(取材:渡邊玲子/加藤真大・構成:加藤真大・文:渡邊玲子)

(写真:加藤真大)

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