アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。第5回に続き、僕がアニメ業界にいた頃のお話です。

 

『SHIROBAKO』の影響もあり、どういった業務内容なのかは、何となくアニメファンの方にも周知されていると思いますが、実際のところどうなのか? 一つの実例として記します。

方向音痴にはつらい車両進行のお仕事


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制作進行としてアニメ業界に入った人が、最初にどんな仕事をするか? スタジオによって千差万別です。まずは基礎的な制作工程の研修をするところもあれば、いきなり絵コンテを机に積まれて「よろしく」と言われるところも。スタジオというか、直属となる制作部長やデスクによるところも大きいでしょうか。

 

僕の場合は、いきなり話数を持つことはありませんでした。下請けスタジオということもあり、先輩の制作進行の方のサポートとして、いわゆる「車両進行」の業務が中心でした。何をする仕事かというと、文字通り車に乗って進行業務の1つ、上り回収をするというものです。先輩進行が管理しているアニメーターや美術スタッフからの上り素材が、スタジオ内のボードに貼られていき、基本的には西側と東側に区分されます。

 

ちなみに、なぜアニメの制作進行が車を使って回収するのかというと、アニメスタジオの多くが中央線か西武新宿線・池袋線の沿線に位置していることが理由の1つです。東京在住の方ならお分かりかと思いますが、23区の山手線沿線はともかく、その環状の外側、中央・総武線、西武線・京王線・小田急線など東西に延びている路線は数あれど、南北に伸びている路線が少ないんですね。南北はバスが基本的な交通手段なのですが、それはそれで融通が利きません。

 

要は車で回った方が効率がいいですし、深夜に回収がおよぶこともデフォルトなので、昼でも夜でも軽自動車(せまい路肩に停めることが多いので、軽自動車が基本)で回収に回るわけです。

 

たとえば、西では、武蔵境のスタジオに行き、三鷹のスタジオを経由して、調布の個人アニメーターの家をまわって帰ってきたり、東村山から所沢へ行くことも。東だと、港区の方まで車を飛ばしつつ、メーカーやアフレコスタジオに行くことも。ちなみに、いずれ書くと思いますが、制作を担うアニメスタジオはほとんど西側、製作をするメーカーはほとんど東側にあります。これを「アニメ業界東西問題」と定義していますが、見えない壁があるのは事実です。

 

話がそれましたが、僕は方向音痴です。電車で逆方向に乗って途中で気づくことがしばしばあるレベルなので、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする車両進行の仕事が、なかなかにできなかった。いまでこそある程度の道は覚えましたが、当時は道は間違えるわ、そのせいで遅れて怒られるなど、つらい思いしかありませんでした。ただ、スタジオ内にいて緊張するよりは、外に出ていたほうが気が楽だったので、そこだけが良かったところ。

 

さて、このあたりで車両進行の基本的なところは抑えてたので、次回以降は実体験エピソード中心でお届けします。

 

>次コラム

第8回 小林プロダクションに回収へ

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