アニメをめぐる冒険型コラム「アニメ・エンタープライズ」。

 

前回のコラムに続いて『機動戦艦ナデシコ』の話題ですが、今回は、エンタープライズ山田が本作でいちばん好きな話数です。

ナデシコのキャラクターの『瞳』が見つめるもの


画像出典:http://images-jp.amazon.com/images/P/B002XGZ1P8.jpg

 

第19話「明日の『艦長』は君だ!」は、シリーズ後半戦の話数ながら『ナデシコ』らしい明るいノリと軽快な表現、そして後藤圭二作画の真骨頂が楽しめる話数です。コンテ・演出を担当した桜井弘明らしさも存分に発揮されています。

 

敵対する木星トカゲも人間であったことが判明。そんな中ナデシコ艦内では、ナデシコの時期艦長を決めるオーディションが開催されることに――。というのが簡単なあらすじ。

 

オーディションをめぐるユリカとプロスペクター(とバックの代理店)のやり取りでは、縦横無尽に画面を動き回るモニター演出が楽しい。こういったSF要素を視覚的、感覚的に魅せるというところが実にアニメらしいですね。

 

艦内の女性陣が浮足立つ中、1人浮かない表情をして輪に加わらないパイロットの1人・リョーコ。幼い頃父親とともに見上げた「一番星」。自分だけの「一番星」を見つけることができたけど、それは戦いの中でした。ひそかに想いを寄せる主人公・アキトが木星トカゲに対して投げかけた「戦うことしかできない奴ら」という言葉が、自分のこととして突き刺さってしまう。

 

この自分の「一番星」、自分が何を一番として生きるのか? ということは、『機動戦艦ナデシコ』シリーズを通して描かれています。ヒロインのユリカはひたすらにアキトのことが好きでたまらないし、もう一人のヒロイン・ルリは「今度はあなたの一番になりたい」と歌います。この他人の「一番」になりたいという気持ちが、のちの劇場版ラストでどう変わるのか? というところが見どころですが、今回注目したいのは、そんなキャラクターたちの心情をどう表現しているか? ということ。

 

それぞれが「一番星」を持っており、強い意志を持っている。それが真っすぐ力強いキャラクターの『瞳』を通じて、我々に伝わってくるのですね。「自分には戦うことしかできない」からたとえ死んでもというリョーコに対し、率直な想いを伝えるアキト。気持ちが揺らいだときに瞳をそらすという演出、言葉を伝えるときは真っすぐとその相手を見つめるカメラアングルは、それらを効果的に映し出しています。

 

ちなみに、余談でもありますが、本編中にも「一番星」の元ネタとなった『トラック野郎』が出てきます。この作品もスクリーンで観ると、走行しているデコトラを正面からとらえた圧倒的な存在感があるOPが印象的。

 

力強くて真っすぐな想いは、真っ向から描く。観ているほうも、それが心地よいですよね。

 

>次コラム

第15回 『機動戦艦ナデシコ』のユリカとルリ

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