名越先生によるクリスティアンの精神分析

 

その後は本作の鍵を握るエピソードの1つでもある、美術館が作成した宣伝動画の炎上問題についても話が及び、いよいよ名越先生によるクリスティアンの精神分析が始まりました。

 

名越:彼は極めて人間的な人ですね。人間は例外なく神経症的であるということを喝破している。そういう意味では、典型的な“人間”。絶えず怯えていて、ある程度知的で、自分が本質からずれたことをやっていると分かっているからこそ、それに何とか自分なりに理屈をつけようとしてワーカホリックになっていく。カメラに映っているクリスティアンの9割に不安が浮かんでいますからね(笑)

 

MCの斉藤さんによると、クリスティアン役に俳優のクレス・バングが起用された理由について「考えていることがすぐ顔に出るタイプだから」とオストルンド監督が語っていたそう。そういった意味では、まさに彼こそクリスティアン役に適任だったとも言えますよね。

 

一方、ヴィヴィアンさんはクリスティアンについて、こんな風に考察されていました。

 

ヴィヴィアン:これでもかっていうほど、彼に災難が降りかかりますよね。まるで、小さなコントの連続みたいな。この人が全部引き受けなくてもいいのでは、と思っちゃうんですが、逆に言うと、クリスティアンというキャラクターの中には、大勢の人物が入っているんでしょうね。だからこそ感情移入しやすい。私たちの代表なんです。彼は、私たちの相対のような感じすらしましたね

 

 

イベントの終盤では、お三方からこの映画を読み解くうえでヒントになりそうな関連書籍の紹介も行われ、最後に再び映画への感想を総括しつつ、イベントは幕を閉じました。

 

保坂:今の時代、アートにおける美術館の重要性は段々変化してきている。アートの中心は、ビエンナーレとかアートフェア。そういう催しの中心って、どんどん変わるんですよね。例えば、アート・バーゼルは前回は香港だったけど、次はスイスのバーゼルです。そうした状況の中で、美術館は一歩引いた状況になっている。

 

だから存在感を示すため、この映画の美術館は、そこに打って出て、炎上したというところでしょうか(笑)。それから、子どもが大人を救済するというのも、この映画のポイントだと思いますね

 

名越:僕はこの映画を観て、キューブリックを思い浮かべたんです。普段は抑圧している人間の暴力性がヒリヒリと浮かび上がっていくという意味では、『時計じかけのオレンジ』や『2001年宇宙の旅』を連想した。キューブリックは影の入れ方や色の使い方が全て丹念で、ノイローゼの極地みたいな人。追い詰め型というか。

 

そういった意味では、『ザ・スクエア~』も手法は違うけれど、そのタイプ。ストレスフルでもあるけれど、観終わった後に必ず何かが変わる映画。僕たちには、自分という枠の外側に出ると大変なことが起きるっていう思い込みがあるんですが、そこから一歩外に出たときの解放感が味わえる映画だと思いますね

 

ヴィヴィアン:ハプニングが起きても、周りの人が傍観するだけで誰も助けようとしない“傍観者効果”っていうのも、重要なテーマの1つとして描かれているじゃないですか。そういった点にも注意して観てみるのもいいと思います。私も違った意味で傍観者効果を感じることが、しょっちゅうありますからね。

 

例えば授業で“質問ありますか?”って聞いても手が挙がらないことが多いけど、質問がないって言うのは、そこにいなかったっていうのと同じですからね!

 

名越:そのヴィヴィアンさんの言葉を、僕が教えている学生にも浴びせたいです(笑)

 

いかがでしたか?

 

この座談会が行われたのは、映画の公開前ということもあり、ネタバレ防止で言及できないもどかしさが、イベントの端々から伝わってきました。この解説を読んだ上で、さらにもう一回映画を観直すと、また初回とは違った発見があるはずですよ!

 

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』概要

 

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

 

4月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、立川シネマシティほか全国公開中。

 

 

 

公式サイト:www.transformer.co.jp/m/thesquare/

 

 

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