▲主人公・初海を演じるのは、高畑勲監督『かぐや姫の物語』でヒロインの声を演じた朝倉あきさん。

 

5月12日(土)より公開となる映画『四月の永い夢』の主人公・初海は、3年前の桜の季節に、恋人の彼を突然亡くしてしまったことを引きずる27歳。

 

本作の監督を務める若き俊英・中川龍太郎監督は、第39回モスクワ国際映画祭で、国際映画批評家連盟賞、ロシア映画批評家連盟特別表彰を見事ダブル受賞する快挙を達成。

 

平成生まれなのに、なぜか『ウルトラセブン』と山田洋次監督作品をこよなく愛するという中川監督と、SWAMP(スワンプ)編集長・加藤による「昭和愛」に満ちた同世代対談インタビューの模様をお届けします!

「知らないものを見たい」という渇望から生まれた「昭和」へのあこがれ

 

SWAMP・加藤(以下、加藤):中川監督は1990年生まれと伺ったんですが、僕も1989年(平成元年)生まれでして.......。

 

中川監督(以下、中川):同世代ですね。

 

加藤:しかも監督は、『ウルトラセブン』や『男はつらいよ』がお好きだという情報を得て、「おぉ~!」って勝手に親近感を持ってきました(笑)。

 

――「二人とも平成生まれなのに、何故?」って気になります(笑)。

 

中川:それはもうそこの居酒屋に行って話した方がいいかもしれない(笑)

 

(一同笑)

 

――そもそも、監督はどうして『ウルトラマン』シリーズに興味を持たれたんですか?

 

中川:自分はもともと登戸で生まれ育ったんです。あの界隈って、『ウルトラマン』の聖地でもあって。※1 メトロン星人のアパートが近かったりして(笑)。

 

※1『ウルトラマン』を手がけた円谷プロは、祖師ヶ谷大蔵にかつて存在していた。メトロン星人が登場する『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」には、登戸や向ケ丘遊園が舞台として登場する。

 

加藤:そうですね! 監督は、我々がまだ生まれていなかった昭和の時代に作られた作品群の、どういったところに魅力を感じ、感化され、面白いと感じるのか。そのあたりのお話から伺えればと思いまして。

 

中川:嫌いなものの理由っていっぱいしゃべれるものですが、好きなものの理由を説明するのって、すごく難しいですよね。ただ一つ言えるのは、僕は『ウルトラマン』を観ても、怪獣とかメカとかに興味があったわけではなくて、そこに描かれている風景や、昭和の絵面みたいなものに、非常に共感を覚えていたということです。

 

あとは、アンヌ隊員とか、『怪奇大作戦』のサー坊とか――疑似恋愛というとちょっと大袈裟だけど――少年が憧れる大人のお姉さんの生活が描かれていて、「あぁ、素敵だな」って(笑)。

 

『ウルトラマン』とか『男はつらいよ』シリーズ以外にも、『太陽にほえろ!』とか『傷だらけの天使』とか、昭和のドラマがすごく好きで。なんで好きになったのかと聞かれると、本当に難しいのですが。

 

加藤:多分、我々の世代って、1990年代前半に幼少期を過ごしているので、うっすらTVで『男はつらいよ』を観ていた記憶はあるんですけど、5~6歳くらいで例えば「さくらさん可愛い!」って思うのは、だいぶ早熟ですよね(笑)。

 

中川:確かに。 でも、事実そうだった可能性はありますね(笑)。

 

加藤:「寅はやっぱり駄目だな~」みたいなことを言う5歳児って(笑)。

 

中川:ははは。確かに、それはヤバいですね(笑)。

 

加藤:「小さい頃、TVで寅さん観てたな~」っていうぼんやりとした記憶があって、改めて観直したときに「あぁ面白いじゃん!」って思った、というわけではないんですか?

 

中川:これは大事なテーマだからゆっくり考えてもいいですか?

 

加藤:はい(笑)。

 

中川:これ、自分としてはすごく大事ですね。

 

加藤:僕らよりもっと上の世代の人たちは、作られた時代に直撃しているわけで。例えば、1966年(の初放映時)に当時6歳児として『ウルトラマン』を観ていた人が、「『ウルトラマン』みたいな作品を作ろう!」と思っていろんな作品を生み出しているわけじゃないですか。その人たちにとっては、リアルタイムで『ウルトラマン』の世界に触れていたっていうことも、宝物なわけですよね。

 

中川:うん、確かに。

 

加藤:でも僕らにはそういうものは無くて、自分で勝手に思っているだけというか。

 

中川:そうですね。

 

加藤:そういうところからも、昭和に対する「あこがれ」みたいなものを感じるのかなと。

 

中川:本当に「あこがれ」っていう言葉でしか語れないものだと思うんですけど、市川崑監督の一連の「横溝正史」原作作品とか、野村芳太郎監督の「松本清張」原作作品とか、大島渚監督の映画もすごく好きでしたね。

 

なんで好きだったのかというと、当時レンタルビデオ屋が家の近くにあって、棚に並んだ無数のパッケージのなかに「大人の世界を垣間見たい」というような欲望があったのかもしれないですね。「知らないものを見たい」っていう欲求から始まったんじゃないかな。

 

『ウルトラマン』に対してハッキリ言えるのは、僕は(怪獣かヒーローかで言うと)ヒーローより怪獣の方に共感があったんですよ。生まれつきへそ曲りだったんだと思うんですけど、まわりのみんなが見ている新しい「平成ウルトラマンシリーズ」とか「平成仮面ライダーシリーズ」には不思議とあまり興味が向かいませんでした。

 

僕はいつもウルトラマンが勝つのがすごく嫌だったんです。善なるものとして、勝つのが前提として描かれているのに抵抗があって。それは『ウルトラセブン』の影響とかそういう次元じゃなくて、もう最初にウルトラマンに触れたときからハッキリと意識できる感情としてありました。友だちと「怪獣ごっこ」とかをやっても、絶対怪獣役になりたかった。初期の寅さんも、悪役の要素があって、それが好きでした。

 

加藤:結構、暴力振るっていますもんね。さくらをぶん殴ったりして。

 

中川:そうそう、ひっぱたいたりしていて。

 

加藤:「こりゃあ、酷ぇわ!」って。

 

中川:でもその寅さんにも結構共感があるんですよ。もちろん晩年の寅さんも良いんですが、「みんなの鼻つまみ者」みたいな存在が、社会の中にある感じっていうのが、すごく好きだったのかもしれないですね。

 

加藤:そういった意味では、監督ご自身も社会と上手く馴染めないから、そっち側の世界に入り込んでいた、といった部分もあったんですか?

 

中川:どうなのでしょうか。僕は小学校の頃は普通に活発な少年だったから、「入り込めなさ」みたいなものは特になかったと思うんですが、現実世界の街を魅力的なものには感じられていなかった、っていうのはハッキリと覚えていますね。

 

それに比べて『ウルトラマン』の中で描かれるあの画質の風景が、すごく魅力的に感じられて。でも実は地続きじゃないですか。新宿駅周辺とか、それほど変わってなかったりもするし。

 

加藤:結構、新宿とか銀座とかには面影も感じますよね。

 

中川:そうなんですよ。残っていますよね。だから、地続きなんだけれども、異世界感があるところに惹かれるというか。

 

加藤:確かに、異世界感はすごくありますよね。

 

中川:でも、例えば戦前まで遡ってしまうと、もう当時の建物が残っていなかったりするので、地続きであることがあまり感じられなかったりもして。

 

加藤:そういう意味で言うと、確か『ウルトラマンA(エース)』の中で、銀座に買い物に行くシーンがあって※2。

 

※2 第5話「大蟻超獣対ウルトラ兄弟」の1シーン。ちなみに、この回はAのピンチにウルトラ兄弟の長兄・ゾフィーが助けにやって来るところも見どころだ。

 

中川:ありましたねえ。北斗(星司)が南(夕子)にめっちゃ買い物させられているんですよね。

 

加藤:そうです、そうです! 僕はその感じもすごく好きなんですけど「あぁ、40年前から銀座ってそういうところだったんだな」って。デートじゃないんだけど、休日に買い物に行く場所っていう。

 

中川:男は女の人に荷物をめっちゃ持たされる、っていうあの感じもね(笑)。あれが大人なんだなっていう風に、僕も見ていましたね。

 

加藤:銀座なんてもう、怪獣が出るためにあるようなものですからね!

 

中川:いやぁ、本当ですよね。怪獣出がちですよね(笑)。

 

加藤:銀座の晴海通りと、三田の桜田通りの東京タワー周辺は見栄えがするんですよ。

 

中川:なるほどね、拓けている道は、怪獣が出やすいんだ(笑)。

 

 

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