「一人ひとりが自分の物語をこの映画の中に見出すことが出来る、そういう映画だと思うんです」

 

 

――この映画のテーマソングを歌っているMIKA(ミーカ)さんは、イタリアではかなり有名なシンガーソングライターのようですね。MIKAさんがこの映画の世界に紛れ込んでしまったかのようなビデオクリップが印象的でしたが、どんな風に撮影されたんですか?

 

 

リマウ:MIKAは、イタリアではスーパースターなんです。ビデオクリップの撮影は、ものすごく興奮させられた経験でした。この映画は、イタリア北部のウーディネという小さな町で撮影されたんですが、MIKAがこの街に来ると聞きつけた住人たちが、彼を一目見ようとゾロゾロ出てきて、みんなが「キャーキャー」と叫んで触りたがるので、大騒ぎになりました(笑)。

 

――へぇ~! そんなに人気があるんですね。

 

リマウ:MIKAは歌手としてはもちろん、人間的にもとても素敵な人なので、撮影自体は素晴らしかったんですが……。エキストラの人たちがあまりにも興奮しすぎて、やるべきことをちゃんとやらなかったので、何回も何回も撮り直さなくちゃいけなくなったことが、一番大変でした(笑)。

 

――あはは! そうだったんですね! あのプロモーションビデオにそんな舞台裏があったとは(笑)。もしかして、ロレンツォが大好きなレディー・ガガより有名ですか?

 

リマウ:レディー・ガガとは、今回一緒にビデオクリップを撮っていないので分かりませんが、もしもガガと一緒だったら、自分も触れてみたかったです(笑)。

 

――イタリアでは公開前から全国各地の高校を、監督を始めとするスタッフ・キャストで回り、ティーチイン付き上映会を行う活動(UN BACIO EXPERIENCE)を実施されたそうですね。なかなかできる経験ではないと思いますが、実際に現役の高校生とディスカッションされてみていかがでした?

 

 

リマウ:素晴らしい経験で、とても満足感を得ることが出来ました。この映画はイタリアの教育省の助成金も受けているので、イタリア中の学校を回ることが出来たんですが、とても興味深かったのは、イタリアは地方によってかなり差異があって、さらに一人ひとり映画の観方も受け取り方も、全然違うということなんです。

 

――なるほど。

 

リマウ:なので、良い反応も悪い反応も含めて、一般論化するのはすごく難しいところがありました。イタリアだけでなく、フランス、メキシコ、イスラエルにもこの映画を持って行ったんですが、やはり国によっても反応が異なります。

 

――そうなんですね。

 

 

リマウ:この映画の良いところは、映画を観る人がそれぞれすごく個人的な受け取り方をすることによって、映画が観た人のものになるということ。つまり、一人ひとりが自分の物語をこの映画の中に見出すことが出来る、そういう映画だと思うんですね。それこそが、僕自身、この映画を愛する理由になっています。

 

――リマウさんご自身は、実際にオーディションを勝ち抜いてこの役柄を演じてみて、そして映画を観てくれた高校生たちとの対話を通じて、自分が新たに成長したと感じられる部分はありますか?

 

リマウ:この映画の撮影が自分自身を変えたと思っています。僕は田舎で育ったんですが、そういった環境で育つと、何が正しくて、何が間違っているということがわからず、そこにある現実が全てだと思い込んでしまうんです。

 

――なるほど。よくわかります。

 

 

リマウ:でもこの映画の撮影を通じて、現実世界の中で必要なものと必要でないものについて考えることが出来たし、これまで見えていなかったものが、見えるようにもなりました。この映画が、僕自身の世界の見方を変えてくれたんです。もしこの映画を撮っていなかったら、自分は21歳なんですが、自分のものの考え方や世界観は、非常に限られたものでしかなかったと思います。

 

そのことによって、まだ具体的に何がもたらされたかはわからないんですが、何かしら得られたのではないかと感じています。

 

――この映画で描かれる結末はすごくショッキングな内容ではあるものの、映画の中にはところどころ映像的に魅かれるシーンも沢山ありました。たとえば、夜の広場でアントニオが自転車に乗る姿をロレンツォとブルーが眺めていたり、教室の壁を3人で真っ白に塗り替えたり、ファッションショーさながらいろんな洋服を試着しまくったり……。ああいったシーンの撮影は、やはり演じている瞬間も楽しかったですか?

 

リマウ:特に教室中をペンキで真っ白に塗るシーンは、とっても楽しかったんですが、川辺で仰向けに寝そべっていたときは、正直ちょっと大変でしたね(笑)。

 

――というと?

 

リマウ:その撮影のときは太陽がカンカン照りで、顔の上でペンキが乾いてバリバリになってしまったんです(笑)。

 

――ははは。確かに、それは大変そうですね!

 

リマウ:お店の中で撮ったシーンが撮影のクランクアップだったんですが、実はカメオ出演している人も沢山いたりして、解放感もあって、とても楽しかったですね。

 

――映画の中でロレンツォが身に付ける個性的な衣装も魅力的でした。「ブルーのお父さんが若い頃に着ていた服」という設定で、モッズ風のファッションを着こなしていたり、ド派手な柄のシャツを好んで着ていたりしましたが、いかがでした?

 

リマウ:衣裳を担当したロッサノ・マルキが、とにかくブッ飛んでいる人なんです(笑)。あれは僕が経験した中で、一番刺激的な衣装合わせでしたね。ロレンツォ役を僕が演じると決まったと同時に、ローマ中の古着屋を巡って、片っ端から洋服を試着していったんです。

 

――へぇ~!

 

リマウ:ちなみに、ロレンツォがニュースキャスターに扮して動画を撮影するシーンで、赤い別珍のジャケットを着ているんですが、あれはイヴァン・コトロネーオ監督の私物なんです。

 

――そうなんですね! すごく似合っていましたよ。

 

リマウ:僕自身、あのジャケットがとっても気に入ったので、「撮影が終わったら欲しいなぁ」と秘かに狙っていたんですが、残念ながら貰えませんでした。

 

――ははは(笑)。それは残念でしたね。

 

リマウ:はい(笑)。

 

――では、最後に。今回、黒崎政夫代表が飛行機の中で『最初で最後のキス』をたまたま目にして一目惚れしてしまい、この映画を配給するために会社(日本イタリア映画社)を作って買い付けたそうですね。これは日本では相当珍しいことなんですが、その話を聞いた時、リマウさんはどう思われました?

 

リマウ:プロデューサーのフランチェスカ・チーマから「政夫っていう人が、君と監督に会いたいって日本から来てる」と聞いた時は、正直「え!? 誰?」って(笑)。「飛行機で観て、この映画を配給することに決めた」と言われて驚きました。最初にお会いした時に、政夫さんからお寿司の形の消しゴムをもらったんですけど、それを今でも使っていて(笑)。

 

――ははは(笑)。

 

リマウ:このエピソード自体は、今となっては笑い話なんですが、映画がもたらす出会いというか、飛行機の中でこの映画をご覧になられて政夫さんに通じるものがあったのであれば、その気持ちを「きっと日本の皆さんにも伝えてくれるんじゃないか」と思えたので、とても嬉しかったですね。しかも、今こうして日本に来ることが出来て幸せです。政夫さんのためにも、この映画に対して出来るだけのことをしたいと思っています。

 

――なるほど。『最初で最後のキス』という映画は、リマウさんの人生も変えるきっかけになったけれど、黒崎さんの人生も大きく変えましたね(笑)。

 

リマウ:まさに! いま2人とも、それをすごく喜んでいます(笑)。

 

――素敵なお話をありがとうございました!

 

 

いかがでしたか? リマウさんはローマ大学の哲学科に通う現役の大学生でもあるのですが、自分の考えをしっかり持った、非常にクレバーな青年であると感じました。

 

インタビューの翌日に行われた公開初日舞台挨拶で、観客に向けて「この映画は賛否両論ある作品だと思っています。ただ、映画を観た後に、何かしらの問題意識が芽生えたとしたなら、それはこの映画がちゃんと機能したということ。皆さんの人生の中で、5分だけでもいいから、この映画が発信しているメッセージについて考えてもらえると嬉しいです」と、澄んだ眼差しでコメントしていたリマウさんの姿が、とても印象に残っています。

 

ぜひ1人でも多くの方々に、監督やリマウさんたちがこの映画に込めたメッセージを、劇場で受け取っていただけると嬉しいです。

 

(写真・加藤真大)

『最初で最後のキス』概要

 

『最初で最後のキス』

 

 

 

 

監督・原案・脚本:イヴァン・コトロネーオ
出演:リマウ・グリッロ・リッツベルガー/ヴァレンティーナ・ロマーニ/レオナルド・パッザッリ
2016年/イタリア/イタリア語/106分/カラー/シネマスコープ/ドルビー5.1ch 原題:Un Bacio 字幕:山田香苗
提供:日本イタリア映画社 配給:ミモザフィルムズ/日本イタリア映画社

 

新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほかにて大ヒット上映中!

 

公式サイト:http://onekiss-movie.jp/

 

 

(C)2016 Indigo Film – Titanus

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