今この時代に『天命の城』を撮った意義

 

――原作を読んで、今の情勢と当時の状況が、とても似ていると感じられたそうですね。監督は、なぜ今この映画を、あの時代に忠実に撮りたいと思われたんですか。

 

監督:小説の中で描かれていた「丙子の役」というのは、形こそ違っても同じようなことが何度も繰り返されてきたと思うんですね。朝鮮半島というのは地理的な条件から、どうしても侵略されてしまう位置にあって、常に外敵にさらされていた。そのために戦争も多かったですし、一番最近の例だと、朝鮮戦争の時まで、本当に何度も何度も戦争が繰り返されてきました。

 

――なるほど。

 

監督:そういうことを考えると、現在の韓国の情勢と当時の状況は、とても似ているなと思ったんです。「丙子の役」が起きた当時は、清という国、それから明という国、まさに中国大陸の中でのいざこざがあった時期で、朝鮮としてはどちらの側に立つかという判断を迫られたものの、上手く判断が出来なかったために、結局侵略されてしまって、降伏することになったという経緯がありましたよね。

 

――はい。

 

監督:今の韓国を見ますと、去年、一昨年あたりから防御ミサイルを配置しろとアメリカに言われ、配置したらしたで、今度は中国に反対され、経済的な報復をすると言われてしまったんですね。

 

――えぇ。

 

監督:そんな風にアメリカと中国の間に挟まれて、いま韓国は非常に困難な状況にあります。それに加えて、北朝鮮が核開発をするということを唱えていますけれども、アメリカはそれに対して攻撃をすると言ってきていますし、中国としてはそれには反対だと言われているので、また似ているところがあるなと思うんです(※2018年4月時点)。

 

なので、この「丙子の役」を映画にして観客に見せることで、過去と同じ失敗を繰り返さないためにどうしたらいいのか、今何をすべきかについて皆で一緒に考えて、悩むきっかけになってくれたら、という思いがありました。

 

――そうだったんですね。

 

監督:これは韓国に限らず、広い目で見ればどこの国でも起こりうることですし、国だけではなく、個人や社会、さらには何か1つの組織の中でも起こりうる話だと思うんですね。

 

――確かにそうですね。

 

監督:韓国で最近流行っている言葉に「自己尊重心」という言葉があるんです。個人が社会や組織から冷遇されたり、ひどい扱いを受けたりするとき使うのですが。

 

――「自己尊重心」ですか?

 

監督:はい。「自己尊重心」を守って自分の信念を貫いた方がいいのか、かたや今は本当に屈辱的ではあっても、それを受け入れて未来のことに備えたほうがいいのか。どうしても岐路に立たされて選択を迫られるというのは、誰にでもあることですし、私たち皆に起こりうることだと思うんですよね。

 

――なるほど。

 

監督:だからこれは決して過去の話ではないですし、朝鮮時代に終わった話でもなく、今現在も繰り返されていて、どこの国でも、どの人にも起こりうることですよ、ということを映画を通じて伝えたかったのです。

 

 

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