「映画を観る」ということがすごく大事です

 

――ちなみに、津田さんご自身にとって「演じる」ことは、どのような意味を持っていますか?

 

津田:やっぱり役者って積み重ねる仕事でもないので、常にいっぺん白紙にしなくちゃいけないというか、リセットしなきゃいけないんです。積み重ねていってしまうと、それは技術的な芝居でしかなくなってしまうんですね。だから気持ちからセリフを出すためには、毎回リセットしていかなきゃいけない。

 

先輩だからすごいというわけでもなければ、芝居をやったことがない人が、どんなにキャリアのある名優も叶わないくらいの芝居をすることがある世界なので。そういった意味で役者というのは、あまり深く考える仕事ではないなっていう。

 

――割と身体的なものというか、感覚的なものだったりするのでしょうか。

 

津田:そうですね。カメラマンや監督は、とにかく俳優の芝居を撮ろうと一生懸命になるけれども、俳優というのは、そんなにみんなに一生懸命になってもらうほどのことをやっているわけでは決してないというか。もし技術的なものだったら、そこに芝居をやったことのない人が入ったら差があるはずなんだけれども、そこから放つものには変わりがないというか、その人の生き様が出るので。

 

下手にキャリアがある人が技術で補ってしまうと、それはどんどん消えていってしまうから、魅力がなくなってしまうんだけれども、エキストラの高校生であろうが誰であろうが、その人をカメラの真ん中に据えれば、放たれるものがある。それをやっぱり撮りたいっていうのが、監督とかカメラマンとか照明さんとかにあるんだけれども、役者は「ガーッ」と光を出して、それを媒体しているだけなんです。

 

――しかし、津田さんのように同時進行でさまざまな現場に入られたりすると、すり減ってしまうこともあるのでは?

 

津田:そうですね。後遺症みたいなことも、あったりはしますけどね。変になっちゃったときも一時ありました。

 

――それは、どんな状態に……?

 

津田:う~ん、正男みたいな(笑)。自分を見失っちゃう。

 

――いろんな役をやりすぎて?

 

津田:そうですね。いまも悪い人の役をやると、普段から悪い自分にちょっとなっちゃいますね。自分の悪いところを引き出してやらなきゃいけないので。本当にイラっとしなきゃいけないんですよね。イラっとし続けると、普段からイライラする人間になってしまいます。

 

――ちなみに、いろんな人を演じるにあたり、日頃どんな風にインプットされているんですか?

 

津田:やっぱり、「映画を観る」ということがすごく大事ですよね。日常で人を観察することが大事だと思っていた時期もあったんですが、いまは結果として出来上がったもの(映画)から、「どういう気持ちでこの人は現場で演じたのかな」っていうのを、想像して組み立てることが結構重要だなと思いますね。

 

――映画館で純粋に観客として映画を観ていた頃と、いざ俳優という立場になってからでは、映画の観方も変わったりしますか?

 

津田:やっぱり俳優目線にはなりますよね。「どういう心情の流れで、いまこの俳優はこの役を演じているのかな」っていうのを、シミュレートしたり。

 

――自分だったらどう演じたかな、というように?

 

津田:そういう時も、あるかもしれないですね。結局は、人の芝居を観るのが一番刺激になるのかなって、最近思います。

 

――それは、日本映画に限らず、外国映画も含めてですか?

 

津田:そうですね。生活習慣が異なるので、日本映画を観るのとはまた違うところはありますけど、勉強にはなりますね。

 

――感情表現だったりとか?

 

津田:まさにそうですね。どうしても外国人の方が、リアルに見えるので。

 

――それは何故?

 

津田:生活の習慣が違うことで、フィルターがひとつ掛かっている、というのがあると思います。だから、もしかすると同じアメリカ人が観ると「あいつの芝居、くせぇよ!」っていうこともあるのかもしれないけど(笑)。

 

でも、フィルターが掛かっているとしても、じゃあ自分は何故この芝居をリアルだと思ったのかっていうことを、いくつか理由を挙げて考えるのは、自分のためになりますね。何がどうしてリアルに見えたのか、「あまり動いてないからかな?」とか「ブレスをほとんどしてないな、このセリフ」とか。

 

――へぇ~! 津田さんは、そういうところを観ているんですね~。

 

津田:そうやってほかの映画も沢山観ながら統計的に考えていくと、「あ、やっぱりブレスをあまり入れない方が、リアルに見えるわ」って気づいて。日常の居酒屋で耳を澄ましてみると、「あ、人って普段しゃべるときって、ほとんどブレスしてないや」とか、そういうところに気づいていきますね。

 

――面白い! そうやって映画から発見していかれるんですね。

 

津田:いまは自分にとって、そういう時期ですかね。昔は、日常で目にしたリアルなものを(芝居に)持ち込まないと、「観たことないような芝居」はできないなと思っていた時期もあったんですけれど、それだとやっぱり上手く行かなくて「だから皆やらないんだな」って気付いたり(笑)。

 

――試行錯誤されているんですね。ちなみに、「本当っぽい芝居」と「嘘っぽい芝居」って、どういう違いがあるんですか?

 

津田:好みはあるとは思うんですけど、「嘘っぽい芝居」の一番の理由は、お客さんにわかりやすい芝居っていうことだと思います。例えば、2時間枠のサスペンスドラマとかだと、あまりペラペラ早口でしゃべるより、説明ゼリフがすごく大事になってくるんです。

 

「犯人は、何時何分に、犯行現場で」って区切りながらゆっくりしゃべると、全然リアルな芝居ではなくなってしまったりもする。でも僕の持論だと、普段区切らずにしゃべっていてもちゃんと伝わるからあまり意識しすぎると、かえって邪魔になる可能性もあるんじゃないかな、とも思いますね。

 

――そういう意味では、津田さんは2時間ドラマも映画も、演技を使い分けたりはされないんですか?

 

津田:僕は分けないようにはしていますね。でも一般的にはどうしても「ながら見する」のがTVなので。昼帯とかだと、お料理している主婦の方を「ハッ」と振り向かせるようなお芝居をやっていかなきゃいけない、っていうのはわかりますけど(笑)。

 

――ちょっと誇張するような感じで。

 

津田:はい。「(大声で)何だって!?」ってセリフが聴こえてTVの方を見た瞬間に、ちょうどCMに入る! みたいな感じでね(笑)。やっぱり、そういうのはみんなすごく考えてやっているんですよ。

 

――あはは(笑)

 

津田:そういえば、このまえ内藤(剛志)さんと一緒にやったときに、内藤さんが急にそこのシーンだけすごい芝居をしかけてきたんです。「内藤さん、何でそんな芝居するんだろう?」って不思議に思っていたら、「ここでCMが入るから、視聴者の心を引き離しちゃいけないんだよ!」って言われて(笑)。

 

――もう、CMのタイミングが肌に染みついている(笑)

 

津田:そうなんですよ! 俺が犯人役で、内藤さんが追い込んで「もうこれ、俺落ちるかな?」って思った瞬間に、なぜか内藤さんが急に優しい目になって、ジーっと見つめてきて。「内藤さん、何でそんな顔するんだ?」って思っていたら、「ここで『やっぱり犯人じゃないの?!』って視聴者に思わせなくちゃいけないんだ!」とかなんとか(笑)。

 

「うわぁ、そこまで考えているんだ!」ってビックリしました。やっぱり連ドラで主演を長年やっていらっしゃる方は、そこまでちゃんと考えていますね。渡瀬(恒彦)さんもそうだったし。「次の回も視聴率を落とさないためには……」とか、すごく考えていらっしゃいましたね。

 

 

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