アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した『皇帝ペンギン』から12年。再び南極大陸で撮影された映画『皇帝ペンギン ただいま』が8月25日(土)より公開となります。

 

公開に先駆け、7月4日(水)に東京・サンシャイン水族館にて、リュック・ジャケ監督と日本のペンギン研究の第一人者・上田一生先生によるスペシャルトークショーが開催されました。『皇帝ペンギン』を鑑賞済みの大勢のペンギンファンに囲まれ、リュック・ジャケ監督の本作に込めた想いが語られた本イベントの模様をお届けします。

 

 

リュック・ジャケ監督は12年ぶりの続編となる本作の制作に関して「2015年にパリで開催された地球温暖化に関する国際的な会議である「COP21」と連動して、南極の現状や皇帝ペンギンたちをふくめた動物たちの情報を映像で提供する機会があり、南極を訪れたんです。前作には事情があり水中の映像が入っていないのですが、皇帝ペンギンたちは生涯の半分を水中で過ごします。彼らの重要な部分を前作で表現できなかったことにフラストレーションがずっと残っていて、「COP21」をきっかけにして本作を撮ることになったんです」

 

とコメント。本作をご覧になった上田先生は、2つポイントがあると言います。

 

「日本語版ナレーションを担当された草刈正雄さんも収録の際に涙を流されたそうで、親子の絆の物語というものが相当な印象を与えたのだなと思います。そして、ジャパンプレミア上映をご覧になった方からメールを頂いて、なるほどと思ったのですが、ダイバーが命がけで潜って撮影した水中の素晴らしい映像と空中のドローンでの撮影。それらがあることで、非常に立体的な作品になっています。今までは南極の氷の上からだけでしたが、本作は色々な視点からペンギンを観ることができるんです」

 

ちなみに南極海の水温はマイナス1.8℃。水深70メートルでの南極海での撮影は、史上初となるとのこと。皇帝ペンギンたち以外の水中生物たちの生態を観ることもできるのです。

 

 

監督は皇帝ペンギンの魅力について、このように語られました。

 

「皇帝ペンギンたちのおかれている環境は、東京のような大きな都市で暮らす我々には想像もつかないような環境なんです。(南極は)私たちにとっても過酷な環境なのですが、想像もできないほどダイナミックな場所に彼らは居るのです。私たちが日常で感じる以上に、とても静かな世界で生きています。彼らは外観の美しさもさることながら、ほかの何とも似ていない魅力を持っているんです。人間を怖がらないので氷原に居る我々撮影クルーに対して、向こうの方から近づいてきてくれますし、とても穏やかで平和的な動物なんです」

 

上田先生も重ねて解説。「巣を作らないペンギンは、皇帝ペンギンとオウサマペンギンの2種類だけなんです。足の上にひなを乗せて育てるのですが、オウサマペンギンは縄張りにこだわりまして、ケンカもよくします。皇帝ペンギンは縄張り争いをすることもなく、ブリザード中でも身を寄せ合って、卵とひなを抱きながらおしくらまんじゅうのようにする。そういう特殊な行動を見せてくれます」とのこと。

 

 

実際に南極の地を訪れている監督は、地球温暖化による変化についても言及されました。

 

「私が初めて南極を訪れたのは1991年です。それから本作のために訪れた2015年までの間に何回か訪れていますが、行くたびに変化を感じます。皆さんもご存知と思いますが、南極のアイスバーンが陸地から分離されてしまっているという事実。もう1つとても衝撃的だったのは、南極で雨を体験したことです。特にひなに対する弊害がとても大きいのです。ひなの羽毛には防水機能がないので、濡れてしまったひなは凍死していくしかなく、たくさんのひなたちが凍死してしまったことが、この数年で記録されています。

 

気象学者たちの研究によると、以前から1℃~2℃の気温の上昇が南極に大きな弊害を起こすと言われてきましたが、それが雨という形でひなたちの生死を決めているのです。想像以上に深刻な事態が起こっていると感じています。このままの状態で温暖化が進むと、50年以内に皇帝ペンギンたちは絶滅すると言われており、この状況を私はどのように解決したらいいかわかりませんし、私が解決できる問題でもないと思っています。私ができることは、そういう状況を多くの人に知ってもらうこと。南極のペンギンたちにだけ弊害が起こっているのではなく、(地球温暖化が)私たちの環境に影響を与えていることを知ってほしいのです」

 

 

この状況に関して、上田先生からも「本作にも登場するアデリーペンギンは、南極半島というところで同じように雨によってひなが死んでしまい、ほとんどいなくなっている状態です。本当に深刻な事態だと思います」と語られました。

 

本作を観ることで、単にかわいいというだけでなく、過酷な環境で生きていく皇帝ペンギンたちの気高さを感じることができるはずです。

 

スペシャルトークショーでは、ご覧になっていた方を交えたペンギンクイズも実施。実際に日本で皇帝ペンギンを見ることができるのは、南紀白浜の「アドベンチャーワールド」と「名古屋港水族館」とのことですが、そのどちらにも行かれたという方も! 映画館で南極大陸の皇帝ペンギンたちの生き様を観たあとに、実際の皇帝ペンギンたちのもとへ行ってみるのもいいですね。

 

『皇帝ペンギン ただいま』概要

 

『皇帝ペンギン ただいま』

8月25日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテほか、全国順次ロードショー!

配給:ハピネット

 

公式サイト:http://penguin-tadaima.com/

 

 

© BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy Gilardini

関連キーワード
映画の関連記事
  • 観てくれる人に喜んでもらいたいという気持ちーー『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督インタビュー
  • 「僕が一番共感できたのは、彼女が脚本を書こうとしている同志であったということ」『500ページの夢の束』ベン・リューイン監督インタビュー
  • どこから来てどこへ行くのかを問い続けるーー『いのちの深呼吸』で向き合う人の「心」
  • 「すべての市民が主人公になる。そんな映画を作りたいと思いました」『1987、ある闘いの真実』チャン・ジュナン監督インタビュー
おすすめの記事