アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した『皇帝ペンギン』から12年の時を経て、リュック・ジャケ監督が再び南極大陸で撮影した映画『皇帝ペンギン ただいま』が、8月25日(土)より公開。

 

こちらのスペシャルトークショーでも話題になったとおり、前作では出来なかった南極海中の皇帝ペンギンの撮影にも成功し、ドローンによる空撮も圧巻の映像美となっています。今年に入り、北極冒険家の荻田泰永さんが「南極点無補給単独徒歩」を成功させ、南極大陸を舞台にしたTVアニメ『宇宙よりも遠い場所』が放送されるなど、南極に対する注目がにわかに集まっている中、SWAMP(スワンプ)ではリュック・ジャケ監督のインタビューを行いました。

 

南極大陸に居ると、月のほうが近いのではないかというように思えるのです。

 

――本作を拝見して、ペンギンという存在が「可愛い」というイメージから生き様を尊敬できるような存在に変わったんです。日本版ナレーションを担当している草刈正雄さんが「南極では風がない夏であればTシャツ姿でいられる」とおっしゃっていたのも印象的でして、皇帝ペンギンが暮らす南極大陸自体の魅力について伺えますか?

 

監督:まず私が感じたのは、人が行かないような「極地」と向き合うことに対する興味です。人によっては山奥に行ってみたい人や海に行ってみたい人もいるでしょう。自然のどこかに身を置くことで自分の英気が養われるのです。私の場合は「極地」と対峙することで力のようなものを認識できたので、そういう意味で非常に惹かれる場所ですね。

 

もう1つは美しさです。南極大陸の景色、そこに生息している生物たちの豊かさ、スケールの大きさすべてが1つの美しさになって魅了してくれます。南極大陸に居ると、地球と自分の距離感が遠くなる感じがするのです。普段生活している場所ではなく南極大陸に居ると、(地球ではなく)月のほうが近いのではないかというように思えます

 

――そうなのですね。僕も登山をしているので、凄く共感できます。本作ではドローンや水中の撮影もありますが、その撮影に挑戦しようと思ったきっかけは何でしょうか?

 

監督:皇帝ペンギンは生涯の半分を水中で過ごすので、その部分を前作で映像に出来なかったことを残念に思っていたのです。昨今のカメラの進歩で、少ない光でも映像が撮れるようになり、南極海での撮影を可能にしてくれるダイバーが居たということが、今回の撮影に挑戦しようと思った大きな理由でした。ダイバーは熟練者ですが、南極の海に入るのは初めてとなります。私にとってもダイバーたちにとっても、大きな挑戦だったのです。

 

▲水中での皇帝ペンギンは、氷原の上にいるときとはまったく違う動物かのようにパワフルに泳ぎ回ります。

 

――いわゆる環境映像としてではなく、ドキュメンタリー映画として制作しようと思ったのには理由があるのでしょうか?

 

監督:私は映画人であり、映画を作るアーティストだと思っています。何か1つのアート作品を作るときにその人の中から出てくるものはありますが、それは何なのかと問われても答えられる人はいないでしょう。自分はこの映画を作るときに複数の人たちと協力して作りましたが、皇帝ペンギンのこういうところを撮りたいと説明は出来ても、なぜそのことを撮りたいと思っているのかは、説明できないのです。研究者たちは皇帝ペンギンを分析してグラフや数字で示しているし、生活のスタイルに関しても科学的にそれを証明しようとします。

 

ですが、私はそういうことにはあまり興味がなく、描きたいものは彼らの行動そのものです。なぜなら、それを観ることで自分たちのことを振り返えることができるからです。私は科学的見地からこの映画を作っているのではなくて、皇帝ペンギンに私が共感できた部分を映像にしているだけで、世界的に『皇帝ペンギン』という映画がヒットしたのは、世界中の人が科学的な根拠云々ではなく、感性的に共感したからだと思います。

 

元々は生物学者であったリュック・ジャケ監督は、初めて南極大陸を訪れた際、知人の映像作家に頼まれた南極の映像を撮ったことをきっかけとして映画監督の道に進まれたそうです。自然そのものを映し出すのではなく、あくまで監督が南極の地で身を持って感じたことをまとめあげたのが、『皇帝ペンギン ただいま』という映画。

 

 

「皇帝ペンギンというのは私にとって非常に魅力のある動物なのですが、いうなればただの鳥なんです。なぜ魅力を感じるのかと言うと、人間に近いものを色々感じさせてくれるから。オスとメスがつがいになって卵を1つだけ生み、協力し合って育てるというところも勿論そうですし、彼らたちの生きる方法というものが、私たちを感動させてくれるのだと思うのです」と監督は語られました。

 

皇帝ペンギンたちの生き様と南極大陸という広大な環境――。僕たちが普段目にすることのできない場所に、ぜひ映画館を通じて行ってみてください!

 

『皇帝ペンギン ただいま』概要

 

『皇帝ペンギン ただいま』

8月25日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテほか、全国順次ロードショー!

配給:ハピネット

 

公式サイト:http://penguin-tadaima.com/

 

 

© BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy Gilardini

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