ベン・リューイン監督作品につながる共通点と、至極の映画3本

 

——ウェンディーは映画の中で大きな一歩を踏み出しますが、ベン・リューイン監督は刑事弁護士から映画の道に方向転換されたそうですね。

 

監督:そうだったっけ(笑)知らない物事に対する恐怖心というのは誰しもが抱えているものだと思うのだけど、僕がウェンディに一番共感できたところは、彼女が脚本を書こうとしている「同志」であったということ。ウェンディが脚本を届けるときに「表現するということが、どれほど大変なことなのかわかってるのか!」って、ものすごい剣幕で訴えるシーンがあるんだけど、撮影中の僕自身にも込み上げてくるものがあって、思わず泣いてしまったんだ。あのセリフは胸に直に響いてくる言葉で、ウェンディが経験する冒険こそが一番訴えかけるものがあると僕は感じたんだ。

 

——監督の過去作『セッションズ』では障がい者の性が赤裸々に描かれ、本作では自閉症の少女が新たな一歩を踏み出す成長物語が綴られます。監督ご自身もポリオを患っていらしたということですが、(『スター・トレック』の世界観にも通ずる)「障がい者に対する偏見や差別のない世界」は、監督の作品における1つのテーマであると言えますか?

 

監督:それは、イエスであるともノーであるとも言える。たしかに、自分が手掛けてきた長編6作品のうち3作品が障がいを持った人たちにフィーチャーしていることを考えたら、共通するテーマが根底にあるのかもしれない。長編以外でも、脳性麻痺を患っている人の作品も作っているんだ。結局、自分を自分の作品から切り離すことは出来ないから、どうしても自分自身が映画に出てくる部分はあるとは思う。でも、極論を言ってしまえば、人は皆誰しもが何らかの障がいを持っているとも言えるし、それこそ「エンターテイメント業界で働きたい」というのも「ある種の障がいである」とも言えるしね(笑)。

 

——なるほど(笑)。ちなみに、『500ページの夢の束』の主人公・ウェンディにとっては『スター・トレック』が唯一の救いになっていますよね。そして世の中には監督が手掛けてこられた『アリー my Love』に救われたという人も多いはず。監督ご自身にとって、人生の支えになるような映画やドラマはありますか?

 

監督:救いになったというよりも、人間としての在り方、あるいは自分の映画作家としての在り方を教えてくれた映画を3本挙げるとするなら、おそらくこんな感じかな。

 

1本目は、オーソン・ウェルズの『第三の男』(1952年)。少ない予算でも名作を生み出すことが出来るんだ、という素晴らしい映画作りの方法を教えてくれた作品だから。どういうわけだか、今でも記憶に深く刻み込まれている映画なんだ。

 

2本目は、エルマンノ・オルミ監督の『就職』(1961年)。ひょっとするとたまたま観た時期が良かったかもしれないけれど、それまで僕は西部劇やジェリー・ルイスの映画を観て育ってきたから、普通の人々の日常生活を切り取った映画をあまり観たことがなくてね。この映画はタイトル通り初めて定職に就く青年の物語なわけだけど、なんてこともない日常を描いても、ちゃんと映画に出来るんだと気付かさせてくれたんだ。

 

3本目は、ビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』(1985年)。子どもの視点から描く世界が素晴らしくて、いまでもすごく印象に残っているよ。

 

あとは、最近だとリチャード・リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』も良い映画だったよね。映画であれだけ大胆な試みが出来るのは素晴らしいことだと思う。でも、僕はスノッブじゃないから『ゴジラ』シリーズとかも大好きだし、身体には良くないと分かりつつも、ついつい食べちゃうジャンクフードみたいな映画を観るのも結構好きなんだ。

 

 

実は、インタビュー当日までは「72歳のベテラン監督が、どうしてこんなにキュートな映画を作ることができたのだろう?」といささか不思議に感じていたのですが、実際にスカイプでお話ししてみて一気に謎が解けました。ちょっぴり毒舌でユーモアのセンスあふれるベン・リューイン監督のお茶目なお人柄に、すっかり魅了されました!

 

500ページの夢の束』概要

500ページの夢の束』

 

2018年9月7日(金)より新宿ピカデリー ほか全国ロードショー

 

公式サイト:http://500page-yume.com/

 

 

©2016 PSB Film LLC

おすすめの記事