エッセイストの森下典子さんが、茶道教室に通った25年の歳月を通して学んだことを綴った『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』。大森立嗣監督がそのエッセイを原作にしてメガホンをとった映画『日日是好日』は、10月13日(土)より全国ロードショーとなっています。

 

公開に先駆け、SWAMP(スワンプ)では主演を務めた黒木華さんと大森立嗣監督にインタビューを行いました。取材が行われたのは8月上旬。「習い事の先生」という枠組みを大きく超えた人生の師匠として、主人公の典子たちを導く武田先生を演じた樹木希林さんについてもお話を伺っています。同じ映画と向き合う女優と監督として、ざっくばらんに展開されるお2人の軽妙なトークを、ぜひ最後までお楽しみください。

 

着物と茶道と「すぐわからないものすぐわかるもの

 

――京都の建仁寺で行われた完成披露イベントでは、皆さんの着物姿がとても素敵でした。黒木さんは、ほかの作品でも割と着物を着られる機会が多いですよね。

 

黒木:ありがたいことに、着物に着慣れてきましたね。とはいえ、樹木さんのように「着崩す」ことがなかなか出来なくて。樹木さんは、ちょっとした遊び心を入れながら、演じるキャラクターによって着物の着方を変えていらっしゃると思うんです。

 

大森:そうだよね。

 

――大森監督も普段から着物は着られていらっしゃるんですか?

 

大森:いやいや……。

 

黒木:すごくお似合いでしたよね!「(もっと普段から)着ればいいじゃない!」って皆さんから言われていましたね(笑)。

 

大森:ははは(笑)。

 

黒木:打って変わって今日は野球少年みたいですが(笑)。

 

大森:自転車で来ちゃったからね(笑)。

 

――息ピッタリという雰囲気ですが、黒木さんはかねてから大森監督の映画に出たいと思っていらした、と。

 

黒木:はい。いつかご一緒させていただきたいとずっと思っていたので、今回本当に嬉しかったです。もっと怖い方なのかと思ってたんですけれど、全然そんなことはなく、すごく繊細な方なんだと感じました。役者の内側から出てくるものをちゃんと見ていてくださるので、とても演じやすかったですね。

 

――『日日是好日』は、茶道を通じて典子の成長していく過程が、20年以上の長いスパンで描かれる作品です。大森監督ご自身も、原作者の森下典子さんに茶道を習ったそうですね。

 

大森:取ってつけたようなお芝居になるのは嫌だったんです。撮影前に頭に入った感覚はあったんですけれど、やっぱり不安でした。それでも黒木さんや樹木さんの集中力がすごくて、助監督もちゃんと動いてくれたので、クランクイン直前に「これなら大丈夫だ」と思えましたね。

 

映画の中で上手くなっていく過程も観客に共有して欲しかったので、寄りのカットだけで逃げるのは「画が弱くなるんじゃないかな」という感じがあったんです。とはいえ、上達していく過程をそのまま順撮りするのは難しかったので、まずはある程度のところまで出来るようになってもらってから、出来ない頃も演じてもらいました。

 

――監督も、だんだんお茶の魅力に憑りつかれるような感覚を味わったりしたのでしょうか。

 

大森:さすがにその境地までは辿りつけなかったですが、一応頭では理解したつもりです。本には「頭で理解するな」と書いてあるんですが(笑)。そもそも原作に興味を持ったのが、今回の映画化のきっかけだったんですよ。それまでお茶なんて見たこともやったこともなかったのに、原作を読んで、自分と近いものに感じられたんですよね。フェデリコ・フェリーニ監督の『道』に関するエピソードから始まるというのもありますし、「頭で考えるより手で覚えるんだ」とか「すぐわからないものすぐわかるものがある」といった言葉は、映画に置き換えても同じことが言えるんです。

 

「世の中にはわかりやすい映画とわかりにくい映画があって、時間をかけて少しずつわかっていくんだ」みたいなことを僕も普段から考えているので、すごく身近に感じたんですよね。そういう視点でこの原作を映画化したいなと思ったというのが、一番大きいです。

 

――「わかりにくかったものが、時間をかけて段々わかっていく」という楽しみは、黒木さんご自身も共感される部分がありますか?

 

黒木:そうですね。そもそも1つのことを長く続けられること自体がすごいことだと思います。私は割と飽き性なので……。あ、でもそんなんじゃダメですよね(笑)。

 

――それは意外です(笑)。

 

黒木:こう見えて本当に3日坊主なんですよ! でも、学生の頃に剣道をやっていたんですが「日々の鍛錬で生活も変わっていく」という教えは、近しいところがあるかもしれないですね。自分自身に置き換えられることがあって面白いなと思いました。

 

 

■次ページ:20代から40代を演じる上で「わかった」こと

 

 

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