平尾菜々花さんとの共演と物事の多面性

 

――本作を撮影されていたのは2年ほど前ということで、プライベートで千原さんがご結婚されたあとのタイミングになりますね。

 

千原:それこそ結婚なんかも衝動的に決めましたからね。僕自身、結婚するなんて思っていなかった部分もありますし。そこは城宮と共通するところなのかなと思いますね。

 

――いまでこそ千原さんもお子さんがいらっしゃいますが、撮影当時は役柄同様「父親」というものを想像しながら演じられたわけですよね。

 

千原:いまから考えると、あのタイミングでよかったなというのはありますね。実際まだ子どもがいない時に撮ったので。

 

――もしいまこのタイミングで映画を撮ったとしたら、千原さん演じる城宮には、また少し違った面が出たと思われますか?

 

千原:多少なりとも、子どもの扱いがこなれている部分が出たかもしれないですね。あとはやっぱり、平尾菜々花という人と芝居をやった瞬間に、「あぁ、これはもう紛れもない天才が現れたな」という感じで、俺の方が引き出してもらっていたというか。「なかなかどえらい大型新人女優が現れたな」と思いましたね。

 

――いやぁ、平尾さんの演技も本当に素晴らしかったです。大人と対等に渡り合っていて。

 

千原:僕なんかより全然上ですよ。

 

 

――どこからあの目つきだったり、口調や声だったりがにじみ出るんだろうって。中でも千原さんが「うわぁ、この子すごいな」と一番感じた場面はどこでした?

 

千原:城宮がヨヨ子の顔を叩くシーンですね。正直「そこは、俺、行けるかなぁ……」みたいな不安な気持ちがあったんですが、結果的には完全にヨヨ子にハンドリングされている感じがしましたからね。

 

――それは、これまでにあまり感じたことがない感覚でしたか?

 

千原:いや、もちろんいろんな役者さんとお芝居するときに「うぁ、上手いことやってくれはるな」みたいな感覚はありますけど、ヨヨ子はそれ以上の感じがありましたね。

 

――原作ではどちらかというと城宮がロリコンという設定だったと思うのですが、映画では城宮と平尾さん演じるヨヨ子が一瞬にして引き合った感じで描かれていますよね。

 

千原:そこに一筋の光みたいなものを感じたんじゃないですかね。城宮の行動って真正面から見るとただの「悪」ですけど、ちょっとカメラ位置を変えるとそれが「正義」だったりもするわけで。普段社会で起きている事件一つとっても我々は片側からしか見ないから、こっち側にもカメラを向けてみたら、それなりの原因があるからこういう結果になっているんだ、みたいなこともありますからね。例えば「引っ越し、引っ越し!」って叫ぶ奈良の「騒音おばさん」なんかも、実際にはそこに至ったいろんな背景があるみたいですから。

 

――かつて千原さんは裁判を傍聴していた時期もあるそうですが、もともと小さい頃から、物事の一面だけを見ないように心がけていた部分があったんですか?

 

千原:まぁ、特に芸人になるようなヤツには、多かれ少なかれそういう部分はあるんじゃないかと思いますけど、言い方を変えると「ひねくれたヤツ」が多いというか。

 

 

――城宮にとって、ヨヨ子は自分自身を映し出す鏡のような存在にも見えたのですが、城宮とヨヨ子の関係性を千原さんご自身はどのように捉えて演じられたのでしょう?

 

千原:台本を読み込み過ぎるのも、読み込み過ぎないのも違うような気がするんですよ。その辺はやっぱり「役者さんってすごいな」と思うところですよね。もちろん僕自身は事前に台本を読んでいるから、この物語がどうなるかわかって演じているわけですけど、映画の中の城宮は、常に自分がこの先どうなるかわからずに生きているわけですからね。

 

――なるほど!

 

千原:だから、演じる前から「ヨヨ子は城宮にとって写し鏡のような存在で……」とか考えてしまうのは、僕は違うんじゃないかなと思うんです。

 

 

■次ページ:『ポルノスター』から『ごっこ』まで

 

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