「最大の愛情をこめて、最低で最高なギャグをやってやろう」

 

――先日、若松監督の初期作品を改めてVHSで観返していて、特典映像として劇場公開時のティーチインの模様が収録されていたんですが、舞台の端に腰掛けてしゃべっている若松監督の姿が、ブラウン管の粗い画面に映し出されて『止め俺』で井浦さんが演じた若松監督の姿と、ピタリと重なったんです。あの独特のしゃべり方や身のこなしは、若松監督そのものでした。

 

井浦:僕が若松監督のもとで演じてきた三島由紀夫さんも、しゃべり方とか体つきは真似しようと思って出来るようなものではないですから、(若松監督から)「新が思う国を憂いた男を演じればいい」と言われていたんです。結局、それしか出来ないんですよね、役者は。だから今回若松監督を演じるとなった時も、同じように僕が思う若松監督を演じればいいんだと。でも、こういう風に僕がしゃべって若松監督を演じていたら、知らない人は「若松監督はこういう人だったんだ」と思うかもしれないですけれど、僕の知っている若松監督は、実際にはこんなにしゃべらないですからね。

 

――なるほど。

 

井浦:やっぱり僕がイメージする若松監督って、標準語と東北なまりが混ざった独特なイントネーションだったりとか、豪快で無頼だけど内股で可愛らしい感じだったり、膝ばっかりさすっていたなとか、そういうものが染み付いているんです。あれはもう芝居というよりは、もはやギャグです。「最大の愛情をこめて、最低で最高なギャグをやってやろう」という感じで、芝居じゃないんです。

 

――それはかつてない感覚ですか?

 

井浦:あとにも先にもないと思います。最大の愛情なので、若松監督のことを思いっきり意識はしているんです。ただ、メチャクチャな人をまっとうに演じたら、それこそ一生の悔いを残してしまうと思ったんです。僕が憧れた若松監督というのは、やっぱり赤塚不二夫さんのマンガの中に出てくるようなメチャクチャな人なんです。自分もメチャクチャな人になっていいんだっていう、こんな幸せなことって、ないじゃないですか。だから「僕なりの最大のメチャクチャなギャグがこれです!」という感じです。

 

 

■次ページ:「最低で最高な夢」が見られて、本当に幸せだったんです。

 

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