マンガ雑誌「モーニング」で2013年から2017年まで連載されたコミック『ギャングース』(マンガ・肥谷圭介さん×ストーリー共同制作・鈴木大介さん)を実写化した映画『ギャングース』が、11月23日(金)より全国公開中。監督・脚本を手掛けたのは、『SR サイタマノラッパー』『22年目の告白—私が殺人犯です—』といった作品で、インディーズとメジャーを股にかけて活躍する入江悠監督です。

 

犯罪集団だけを標的とする「タタキ(強盗)」稼業で、過酷な社会を生き抜く3人の少年を主人公にした『ギャングース』は、鈴木大介さんのルポルタージュ『家のない少年たち』を原案にしたリアルなストーリーラインと、マンガならではのエンターテイメント性あふれる作風でアウトローを描いた意欲作。このたびSWAMP(スワンプ)では入江監督にインタビュー行い、映画化にあたって特にこだわった点から、映画ファンだった監督が「作り手」を目指した理由、そして今後取り組んでみたいテーマに至るまで、じっくりとお話を伺いました。

 

入江監督と地方都市と映画ファンの熱量

 

——入江監督は地方の映画館にもふらりと立ち寄られて、ご自身の作品をPRされていますよね。

 

入江悠監督(以下、入江):そうですね。自分の映画が、どこで誰に観られているのかということに対して実感をもたないと、ちょっと怖いなと思うんです。

 

最近も『ギャングース』公開館の1つであるセントラルシネマ宮崎に飛び込みで行って、支配人に案内していただいたんです。そうすることで映画館の大きさもわかるし、そこの映画館に来ている市民の方々に「11月23日から公開します」と挨拶もできる。「この地域で『ギャングース』を観に来てくれる人はどれくらいいるのかな」って、ようやく実感が湧いてくるんですよ。全国150館とか200館といったような数字だけしか見ないのは「ちょっと危ないな」と思いますね。

 

——「危ない」というのは、映画を作るときの意識が変わってくるということですか?

 

入江:そうですね。僕が地方都市を舞台にした作品を多く手掛けていることにも、関係があるかもしれない。その土地ごとの観客の顔を知っていた方がいいし、それこそ常に「この映画が、果たしてこの人たちにちゃんと届くんだろうか?」と自問自答しながら撮っていたい、という感じはありますね。

 

——それは作品の規模には限らず、原作モノであってもオリジナル脚本であっても同じスタンスで臨まれているということですか?

 

入江:企画内容には関係なく、自分の監督した映画が観客にどう受け入れられるのか知りたいんです。それは批判であっても構わないんですけれど、やっぱりモノを作る上では何事にもフィードバックが大事じゃないですか。

 

——いまはSNSでエゴサーチがすぐに出来てしまう時代なので、反響がダイレクトに伝わってきたりもしますよね。

 

入江:う〜ん、どうなんですかね。僕自身、『SR サイタマノラッパー』の公開時からずっとエゴサーチをしてきましたけど、最近のSNSの反応は浅いんですよね。

 

——というと?

 

入江:いわゆるブログ文化がなくなったことも大きいと思うんですよ。140字以内で書けるものには、それほどの熱量は感じられないんです。ブログの頃の方が、観た人たちの考察がいまよりよっぽど深くて、たとえ文句を言うにしても熱量が全く違うんです。こちらとしても評論を読んでいる感じがあったし、フィードバックが大きかったですよね。

 

——なるほど。SNSのエゴサーチで表面的な反応に一喜一憂しても、あまり意味がないということですね。

 

入江:そうですね。それこそ実際に自分で映画館に行って、上映後にお客さんがどんな顔をして出てくるのか観察すると一発で反応がわかるので、思わず「うわぁ……」ってなるときもあります(笑)。地方の映画祭の観客の中には「前の作品のカットは良かったけど、今回の映画には良いカットがなかった」といったようなコメントをくれる人もいるので。

 

——地方の映画祭では、観客の反応が割と率直だという話を聞きますね。どうしてだと思いますか?

 

入江:なんですかね。おそらく、あまり空気を読む必要が無いから、素直に感想を言ってくれるんじゃないですかね(笑)。

 

——忖度しないということですね(笑)。そもそも監督は、意識的に地方都市を舞台にした作品を作られているのでしょうか。

 

入江:なぜか自然とそうなってしまうだけだと思います。今回の『ギャングース』も出版社の方から映画化を提案していただいたんですが、どう考えても東京のど真ん中の話ではないですよね。でも、言われてみると自分から渋谷や六本木を舞台にして脚本を書きたいとは、あまり思わないかもしれない。

 

——入江監督の場合「脚本は足で書く」という言葉通り、普段から入念に取材やリサーチをされていらっしゃるイメージがあるのですが、取材をするのと受けるのはどちらが好きですか?

 

入江:僕は自分の知らないことを知っていく作業がすごく好きなので、こういう風に取材を受けるのは全然好きじゃないですね(笑)。自分が知っていることを人に伝えることには、興味が無いんですよ。

 

——えぇ〜!?  でも人に何かを伝えるのも、映画監督の大事な仕事ですよね。

 

入江:そうなんです。だから映画の現場ではいつも不満が出ますね。「俺、監督から何も聞いてない」とか「このまえ言ってた話と違うじゃないか」とか(笑)。もちろん、思いついたときにはちゃんと「こうしてほしい」って言いますよ。でも少し時間が経つと言った気になってしまって忘れてしまうので、スタッフから文句を言われることは多々ありますね。さすがに最近は僕も反省して、なるべく意識して伝えるようにはしていますが。

 

 

■次ページ:メジャーとインディーズの二項対立の意味とは?

 

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