前作『MR.LONG/ミスター・ロン』では台湾の大スター、チャン・チェンさんを起用して話題を集めたSABU監督の最新作『jam』が、いよいよ12月1日(土)より全国公開されます。

 

劇団EXILEの全メンバーが総出演する『jam』は、EXILEのHIROさんプロデュースによる完全オリジナル新作プロジェクト。場末のアイドル演歌歌手・ヒロシに扮する青柳翔さんと、意識が戻らない彼女のために善いことを続けるタケルを演じる町田啓太さん、そして自分を刑務所に送ったヤクザたちに復讐を仕掛け、追い回されることになるテツオを演じる鈴木伸之さんをはじめ、劇団EXILEのメンバーたちがそれぞれの役柄に扮し、因果応報を体感しながら交錯していく物語です。

 

このたびSWAMP(スワンプ)では、疾走感あふれる独自の世界観で国内外から注目され続けるSABU監督にインタビューを敢行。『jam』の成り立ちから、バンドマンを目指していたのに役者を経て映画監督になった理由、そしてSABUワールドに欠かせない「走るシーン」の裏話に至るまで、たっぷりお話を伺いました。

 

SABU監督のキャラクター造形秘話

 

——以前、青柳翔さんに取材した際「印象に残っている役柄」について伺ったところ「演歌歌手役」とお話しされていて、「青柳さんが演歌歌手?」とずっと気になっていたんです。今回『jam』を拝見して「このことだったんだ!」と腑に落ちました。そもそもどういった発想から、青柳さんに演歌歌手役をオファーされたんですか?

 

SABU監督(以下、SABU):MR.LONG/ミスター・ロン』がベルリン国際映画祭で上映された際に、青柳君がタキシード姿でレッドカーペットを歩く姿を見て「演歌歌手っぽいな」と感じて、ピンと来たんです。どこかホストっぽい感じというか、独特のいやらしさみたいなものが彼ならうまく出せるんじゃないかと思ったんですが、予想以上にハマりましたね(笑)。

 

 

——ド派手な衣装を青柳さんが見事に着こなしていて驚きました。楽屋での振る舞いや、ファンミーティングの様子などが非常にコミカルかつシニカルに描かれていますが、いったいどのようにキャラクターを構築されたのでしょうか。

 

SABU:あくまで僕が勝手に想像した架空のものですが、どこか宗教的な雰囲気も含めて、お金を持っているファン同士の関係性まで描いてみたかったんです。この題材を通じて、ヒロシというキャラクターの「一見何かを考えていそうで、実際は何も考えていない」底の浅さのようなものが、どれだけ引き出せるのだろうかと思いながら脚本を書き進めていきました。

 

——『jam』というタイトルだけあって、本作は複数の物語が同時に進んでいく群像劇になっていますね。劇団EXILEの面々が総出演するというコンセプトを最大限活かすにあたり、キャラクターはどのように膨らませていかれたのでしょうか。

 

 

SABU:青柳君、鈴木君、町田君の3人をメインにするというのはもともと決まっていたんですが、僕は青柳君以外には会ったことがなかったので、まずはお2人と直接お会いして、その印象をもとにそれぞれのキャラクターのイメージを作っていった、という感じですね。

 

 

——ということは、3人とも完全にアテ書きされたということですね。

 

SABU:そうなりますね。

 

——今回のような(脚本の)書き方をされることは、これまでにもありましたか?

 

SABU:『ポストマン・ブルース』で大杉漣さんが演じた「殺し屋ジョー」なんかは完全にアテ書きですね。大杉さんは「渋い俳優」だなんて言われていましたけど、実際はすごくよくしゃべる方なんです。カッコ良さと、ものすごくおしゃべりな面をあわせ持つところはそのままキャラクターに使わせてもらったので、そういう意味では、今回もそれとちょっと似たような作り方をしているかもしれないですね。

 

——『jam』はアーティストとファンの特殊な関係性や、ある種の情念みたいなものが浮き彫りになる作品であるとも言えますよね。中でもヒロシに入れあげる中年女性・昌子の姿に、人間の可笑しみとか哀しさのようなものが投影されていて、切なくなりました。

 

 

SABU:『jam』のテーマは大きく分けると「さまざまな愛の形」なんですよ。俺の場合はコメディと言っても結果的に笑えるものになるよう全体的なリズムを考えて作っているので、いかに前振り部分で観客を緊張させられるか、というのが大切になってくるんです。そういう意味では、筒井真理子さんが演じてくださった昌子のキャラクターはすごく重要で、どこか狂気的なところを微妙に盛り込みながらも、曲を一緒に作る過程では一瞬恋人同士になったような、変な空気が醸し出せればいいなと思っていました。

 

——作曲に関しては、かなり本気モードですよね。

 

SABU:昌子はいつでも本気ですよ。本当に面白い女性なんです。

 

——こんなに興味深いキャラクターには、映画といえどもなかなかお目にかかれません。いったい普段SABU監督はどんな人物や出来事に着想を得て、キャラクター造形をされているんですか? 日頃からネタをストックされたりしているのでしょうか。

 

SABU:ストックはしていないですけど、例えばこうして取材を受けていても、いろんな人と会えますからね。

 

——え!? ということは、もしかするといま私も観察されているということですか?

 

SABU:大体わかりますからね。「あぁ、きっとこの人はこういう風に会話を運びたいんだろうな」とかね。いろいろと注目ポイントはありますよ(笑)。

 

——うわぁ、怖い怖い……。誰かと会って話すときは、常にそんな感じなんですか?

 

SABU:いつもじゃないですけど、記憶に残っている人とか衣装なんかは映画のキャラクターに活かすこともありますね。

 

——いったい、ここからどうやって話を進めたらいいものか……。頭が真っ白になって焦っていることも、監督に全部読まれているのかと思うと、もはや何も言えなくなりますね。

 

SABU:そんなことないですよ(笑)。お好きなように聞いていただければ。

 

 

■次ページ:バンドマンから役者を経て監督になるまでの道程

 

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