チェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭をはじめ世界各地70以上もの国際映画祭で上映され、数々の賞に輝いた『彼が愛したケーキ職人』が、12月1日(土)より劇場公開中です。

 

メガホンを取ったのは、本作で長編映画デビューを果たしたイスラエルの新鋭オフィル・ラウル・グレイツァ監督。敬虔なユダヤ教徒だった父と、宗教を信じていなかった母との間で生まれ育ち、南イスラエルにあるサピル学院大学で映画制作を学んだグレイツァ監督が、知人の妻から聞いた話に着想を得て、約8年の歳月をかけて完成させた作品なんです。

 

物語の主人公は、秘密の関係にあった恋人を不慮の事故で失ったドイツ人のケーキ職人・トーマスと、夫を亡くし女手1つでカフェを切り盛りしながら息子を育てるイスラエル人のアナト。同じ男性を愛した2人の男女がエルサレムの街で巡り合い、喪失感を抱えながらも宗教やセクシュアリティの違いを超越して惹かれ合っていく姿が、美しい映像とともに綴られます。

 

このたびSWAMP(スワンプ)では、第31回東京国際映画祭での上映に合わせて来日した、プロデューサーのイタイ・タミールさんにインタビューを敢行。本作が映画化されたいきさつや、普段なかなか聞けないイスラエルの最新映画事情についてお話を伺いました。

 

遠いイスラエルの地で上映された日本映画とは?

 

――先日、本作と同じイスラエル映画『運命は踊る』のサミュエル・マオズ監督にもインタビューしたのですが、とてもアーティスティックな作品で、自分がイメージしていたイスラエル映画の印象が覆ったんです。本作も映像が美しく、個人的にとても共感できる要素が詰まっていたのですが、いわゆる「イスラエル映画の王道」とはどういうものか気になりました。やはりイスラエルでも、エンターテイメント色の強いハリウッド映画のようなものが人気だったりしますか?

 

タミール:それはきっと世界中どこでもそうでしょう。いわゆるブロックバスター系の映画とアート系の映画がありますが、『彼が愛したケーキ職人』はまぎれもなくアート系の映画だと思います。『運命は踊る』もそうだと思うのですが、イスラエルではアート系の映画がわりと沢山作られる傾向にあります。物語さえよければ、観客は劇場に足を運ぶのです。だからこそ、映画を作るときは自分を信じて良いものを作ることに終始すれば、ちゃんと観客はついてくると思います。

 

――イスラエルの映画館では、海外のアート系映画も観ることができますか?

 

タミール:テルアビブでは、割と観られる機会が多いですね。フランス映画が一番多いですが、イラン映画とかルーマニア映画もスクリーンでよくかかります。タイトルはちょっとすぐには思い出せないけど、日本の映画も上映されていましたよ。

 

――へぇ~! 何の作品だろう? すごく気になります。

 

タミール:お時間をいただけるなら、調べてみましょう。

 

――ありがとうございます。ぜひお願いします!

 

タミール:(スマホで調べられ)え~っと、確かこの映画です。ミヤザワ、オダギリ、スギサキ……。

 

――あぁ!『湯を沸かすほどの熱い愛』ですね。日本アカデミー賞でも各賞を受賞した作品です。

 

タミール:そうなんですね。

 

――個人的にも大好きな映画なので、イスラエルでも上映されていると伺ってとても嬉しいです。

 

タミール:プロデューサーの立場としては、世界中でもっとアート系の作品が増えて欲しいというのはやまやまなのですが、みんな誰しも日々いろんな問題を抱えながら生活しているので、どちらかと言えば何も考えずに楽しめる映画の方が好まれる傾向にあると思っています。アート系の作品は観終わったあと、考えさせられる作品が多いですからね。

 

 

■次ページ:日本でリメイクされたら、おにぎり職人⁈

 

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