第35回大宅壮一ノンフィクション賞・第25回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した渡辺一史氏のノンフィクション『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』をもとに、大泉洋さん主演で映画化した『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』が、12月28日(金)より劇場公開。筋ジストロフィーを患い車いす生活を余儀なくされながらも、病院を飛び出してボランティア仲間たちと自立生活を送る鹿野靖明さんの人生を、ユーモアたっぷりに描いた感動作です。

 

このたびSWAMP(スワンプ)では、本作を手掛けた前田哲監督にインタビューを敢行。「映画監督になることしか考えていなかった」という幼少時代のエピソードから、19歳で飛び込んだ撮影現場の裏話、そして本作を通じて監督が伝えたかったことまで、たっぷりと伺ったお話を前後編に分けてお届けします。

 

「G.I.ジョー」から高校生時代の自主制作作品まで

 

——SWAMP(スワンプ)は、映画やエンタメの「沼」の魅力を追求するWEBサイトなんです。

 

前田哲監督(以下、前田監督):映画は麻薬ですけどね。

 

——え!? 麻薬ですか?

 

前田監督:やみつきになる。止められない、抜けられない。

 

——なるほど。監督は小さい頃に雑誌「LIFE」の映画の記事を集めた本を買って、映画監督を目指されたそうですね。

 

前田監督:僕は小学校の卒業文集に、当時は映画の世界で一番偉い人が映画監督だということがわからなくて「映画のプロデューサーになりたい」って書いたんです。ハンチング帽を被ってインカムをつけて、カチンコを持ってる絵と一緒にね。それが僕にとっての「映画監督」の印象だったんですよ。

 

——まさに「絵に描いたような」監督像ですね(笑)。

 

前田監督:小学校4年の時には、既に映画の世界に入ると決めていましたから。僕にとってはスティーブ・マックイーンが神様だったから、TVの『金曜ロードショー』とか『ゴールデン洋画劇場』で放映された映画のワンシーンを、友達と2人で次の日に演じるわけですよ。例えば『荒野の七人』だったらスティーブ・マックイーンの拳銃の撃ち方を僕が真似してみせたり、『大脱走』だったら机を並べてトンネルに見立ててその下をくぐったり。きっと女子はそれを横目で見ながら「馬鹿だなぁ、あの2人」と思っていたんじゃないですか。周りの皆がボール遊びをしているときも、僕らはずっと映画のシーンを演じていたんです。

 

——役者になりたいとは思わなかったのですか?

 

前田監督:当時は「SCREEN(スクリーン)」や「 ROADSHOW(ロードショー)」が愛読書で、スターの写真を眺めて「かっこいいな」と思ってはいたけれど、自分で演じることより誰かに動きをつけたりするのが好きだったんですよ。

 

——いわゆる「演出」ですよね。

 

前田監督:そう。当時僕は「G.I.ジョー」っていうフィギュアを3体持っていたんですけれど、自分で作ったストーリーに合わせて動かして遊んでいたんです。ちなみに三谷幸喜監督は「(G.I.ジョーを)10体持っていた」と昔ラジオで話しているのを聴きました。だからきっと彼は群像劇が得意で、僕の映画は主役が3人までなのかなぁって(笑)。

 

——ははは(笑)。幼少時代に好きだったものが、今の監督ご自身の表現に直結していると思われますか?

 

前田監督:そうですね。昔から映画にしか興味がなかったし、いまだに映画以外に趣味は無いですからね。高校生の頃、文化祭に合わせて「COMPLEX21」と言う架空の映画会社を作って、8ミリカメラで映画を撮り始めたんです。

 

——どんな内容の映画だったんですか?

 

前田監督:自分と一緒にいた友だちが、バンド仲間や、バイク仲間や、彼女の方へと離れていくことに恨みを抱いて、その友だちの仲間を1人ずつ殺していくというものすごく黒いストーリーです。しかも、最終的には自分も飛び降りて死んでしまいますからね。サウンドトラックは全編「RCサクセション」。『トランジスタ・ラジオ』から始まって、最後は『ヒッピーに捧ぐ』で終わる。あ、でも途中に「KING CRIMSON(キング・クリムゾン)」の曲とかも入っていた。ちなみに映画のタイトルは『鏡の向こう側』でした。

 

——かっこいいですね(笑)。今でも観ることができますか?

 

前田監督:観られますけど、やっぱり恥ずかしいよね。昔、学生向けの映像フェスティバルの審査員をやったときに、一度だけ上映したことはあるけどね。

 

 

■次ページ:映画の現場に飛び込んで得た「人間関係」

 

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