たくさんの物語と人との出会いーー

 

ーー「雪国」を今もなお作り続けている井山さんですが、人に合わせて味を変えたり砂糖を粉雪に見立てるように細かくしていたり、普遍的なものだとしても細かいところを変えているところが魅力的でした。そういう井山さんの人柄に惹きつけられる人が多いのもわかります。

 

渡辺:(『YUKIGUNI』のナレーションを務めている)小林薫さんも2晩連続で「ケルン」に行かれたようです。ひと晩目はたまたま秋田で仕事があったご友人の方と行かれて、翌日には井山さんに質問をたくさんして帰られたようで「あんなに井山さんに鋭い質問をしていた人は初めてです」とアルバイトの方も言っていました。

 

ーーいやぁ、さすがですね。

 

佐藤:酒田という土壌も人を呼ぶというか。古い建物が残っていたりとか、そういうところもあるのかな。

 

渡辺:ロマンがあるのかもしれないですね。地元の人は気づかないというか、なんとなく知っているけれどそれを物語として語っているわけではないので、断片的な事実として日常会話に出てくるくらい。ドキュメンタリーの面白いところは、事実なんだけれども映画という形式にすると物語になるんです。やっぱり映画って凄いなと思うことは、それを語り継ぐことによって、時代を経ても古びないものになっていく。

 

これだけ情報量が多い現代でも、映画という形式はまだまだ役割があると思いました。『YUKIGUNI』もそうなんですが、『世界一と言われた映画館』で強く感じたのは、「グリーン・ハウス」という存在は40年間封印されてきたのに、物語となって新しい命が宿ったことで今から語り継がれていくんだということなんです。

 

 

ーー亡くなってしまった大杉漣さんがナレーションを担当しているというのも、多くの人にとって感慨深いものがありますよね。

 

佐藤:やっぱり大杉漣さんのことがみんな好きなんですよね。亡くなられてから、初めてそのことに気づいたのかもしれない。

 

ーー舞台挨拶のときに『世界一と言われた映画館』の予告編が流れた時も、座席にいたご婦人が「大杉さんなんだぁ……」ってしみじみと言っていました。

 

佐藤:いま有楽町スバル座のショーウインドウに大杉さんの直筆メッセージが飾っているのですが、書かれた色紙をマスコミの方の前で出した時もどよめきが起こりましたね。何気なく書いてもらったものだったんですが。

 

▲『世界一と言われた映画館』の公式サイトにも掲載されている大杉さんの直筆メッセージ。

 

渡辺:大杉漣さんも小林薫さんも本当にすごい俳優さんなんですが、ローバジェットのドキュメンタリー映画も承けていただいて、映画に命を吹き込んでもらえたというか。

 

佐藤:佐藤久一さんの言葉も最初は字幕で出していたんですが、それだとやっぱり味気ないわけですよ。誰かに読んでもらった方がいいなと思って、大杉さんにお願いしてやっていただいたんですけれど、予想以上でした。「うわぁ、こうなるんだ」って。

 

ーーどちらのナレーションも素晴らしかったです。

 

佐藤:あくまで「グリーン・ハウス」という映画館に焦点を当てようと言いつつも、話を聞いて行くと久一さんに引っ張られていって、そっちにいくとフランス料理の話やあれもこれもとなっていくので、今回はここまでにしていこうと。

 

渡辺:井山計一さん、佐藤久一さんの物語は誰かが言っていたんですけれど、映画という形式よりも朝ドラというかそのくらいのボリュームのある大きな枠組みで詰め込んだ方が映えると思うんです。だから今回、酒田の骨太な歴史を、映画館とカクテルにそれぞれ、絞ったのはよかったなと思いますね!

 

 

ーー映画館もそうですし、何気なくあったものの大切さというか。いわゆるチェーン店やシネコンは便利ですが、昔ながらのものに惹かれるっていうのは、それだけじゃないものを人々は求めているんですよね。

 

渡辺:その通りだと思いますよ。日本中どこに行っても同じような風景や建物の中で暮らしている中で、やっぱりどこか物足りなさを感じているのかなと思うんです。ムードを感じる場所というものは東京の人に限らず、映画や物語として求めているような気がします。人間の本能的な欲求として、そういうものがないと生きる喜びというか実感が得られないというか。だからこそ、肌触りや手触りがあるものを求めているんじゃないかな。

 

 

ーー人の温もりを感じられる「グリーン・ハウス」や「ケルン」のような場所が、確固たる地盤としてあってほしいです。都合がいいかもしれないけれど、1年に1回でも、ふとしたときに帰れる場所みたいな。

 

渡辺:この映画をきっかけにして、ぜひそういう場所を地方や山形に作っていきたいですよね。

 

佐藤:その通りですね。

 

ーー再注目してほしいですよね。「ケルン」には今も行けますし、映画好きだったら「グリーン・ハウス」に絶対1度は行って映画を観たかったと思いますから。あの回転ドアを開けたかった(笑)。

 

佐藤:そこから『ムーンライト・セレナーデ』がかかって。それもDJですね(笑)。

 

ーー映画との出会いも、そこに描かれるたくさんの人生との出会いと言いますか。

 

渡辺:広一さんもこれまでドラマはたくさん撮られていますけれど、長編ドキュメンタリーで全国公開したのは今作が初めてということで、配給会社の方をはじめたくさんの方と出会って刺激をもらえたというか。

 

佐藤:それは本当にそうで、いろいろな人と知り合えて、いい出会いが生まれましたね。

 

渡辺:映画が公開したときの一番のギフトは人の出会いですね。映画がなかったら絶対に出会わなかった人と、凄い密度で出会えるんです。それが最高に面白いので、やめられなくなっちゃうんですが。

 

ーー映画は麻薬だという監督もいらっしゃいますね。

 

渡辺:近いところがありますね。次に作れるかわからないしお客さんが入らないという厳しい現実もあるかもしれないけれど、それも含めて人生の肥やしだと思うので、作り続けたいなと思いますね。

 

ーーこのSWAMP(スワンプ)も、そういう作品と人との出会いの一端になればと思って追究活動をしているんです。いいですよね、出会いって!

 

 

輝きに満ちた井山さんという人に出会える『YUKIGUNI』と、たくさんの世界に連れて行ってくれる映画館の魅力が詰まった『世界一と言われた映画館』。どちらの物語も骨太で人の温もりを感じられる作品です。ぜひ劇場で両作をご覧になってみてください。カクテルとコーヒーと、誰かとの語らいを添えてーー。

 

『世界一と言われた映画館』概要

 

『世界一と言われた映画館』

2019年1月5日(土) 有楽町スバル座ほか全国順次公開

配給:アルゴ・ピクチャーズ

 

公式サイト:http://sekaiichi-eigakan.com/

 

 

©認定NPO法人 山形国際ドキュメンタリー映画祭

 

『YUKIGUNI』概要

 

『YUKIGUNI』

1月2日(水)よりポレポレ東中野・UPLINK 渋谷で同時公開。その後、順次全国劇場公開予定。
ナレーション:小林薫 |製作・配給:いでは堂|監督:渡辺智史|撮影:佐藤広一|編集:渡辺智史 |上映時間:87 分|カラー|

 

【ポレポレ東中野上映スケジュール速報!!】
1/12(土)~18(金) 12:40/17:00/21:00
1/19(土)~2/1(金) 19:00
※2/2以降未定

〈劇場詳細〉
東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下
TEL:03-3371-0088


https://www.mmjp.or.jp/pole2/

 

★★ポレポレ東中野 週末イベント紹介★★

 

1/12(土) 12:40の回上映後 トーク
ゲスト : ナカムラケンタ(日本仕事百貨代表、popcorn共同代表)、渡辺智史(監督)

1/12(土) 17:00の回上映後
ゲスト : 渡辺智史(監督) 舞台挨拶

1/13(日) 12:40の回上映後 トーク
ゲスト : 古谷三敏(漫画家「BARレモン・ハート」)、渡辺智史(監督)

1/14(月祝) 12:40の回上映後 スペシャルミニライブ
ゲスト : 後藤輝夫(sax)&佐津間純(guitar)
※本作で使用している楽曲を中心に演奏予定

 

★★UPLINK渋谷 週末イベント紹介★★

▽1/13(日)
15:30の回上映後 
石井かほり(映画監督・『一献の系譜』『ひとにぎりの塩』)渡辺智史(監督)舞台挨拶
▽1/14(月祝)
15:30の回上映後 渡辺智史(監督)舞台挨拶

〈劇場詳細〉
東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階 
TEL:03-6825-5503

https://shibuya.uplink.co.jp/

 

 

公式サイト:http://yuki-guni.jp/

 

 

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