屋根裏でコウモリに話しかけながら暮らしていた少年が、俺の中にまだいるんだよ。

 

――ちなみに、阪本監督が「このネタは映画になるな」と感じる瞬間とは?

 

監督:基本的には過去の作品の残滓だったりするのかもしれないけど、逆に既に一回触ったものは面白くないから触らないということもあるし、ニュースを観たり新聞を読んだりしていて、ネタを思いつくこともある。でもいまは「還暦を超えてどれだけ突拍子もないことをやれるか」っていうのが、自分のテーマかな。

 

——「突拍子もないこと」にも、いろいろあるとは思うのですが……。

 

監督:そりゃ、あるだろう(笑)。楽しみにしといてよ。映画って、どんでん返しも含めて観客の意表をつくような作為もしなければいけないと思うんだけど、それよりもまずは自分自身が「え!? 俺、これやるの?」って驚くくらい、意表をつくようなものを自分で思いつけるかっていうのが大事だよね。

 

——誰かに言われて「え!? 俺がこれやるの?」と思うのではなく?

 

監督:「これは違うな」「これも違うなぁ」「あ、でもなんかワンシーン浮かんだな」「うわ、俺やるの? これ」みたいな感じかな。そうするともう、1日くらいで起承転結くらいはバーッと書けちゃうもんだよ。

 

——何かが降りてくるような感覚ですか?

 

監督:そうね。なんか気持ちわる〜い自分がいるんですよ。

 

——かつて屋根裏でコウモリと遊んでいた「順治少年」のような?

 

監督:そうそう! まさにそれだよ、それそれ! 屋根裏でコウモリに話しかけながら暮らしていた少年が、俺の中にまだいるんだよ。みんな子どもの時は「妄想と幻想」で遊ぶじゃない? 「いい年こいて子どもじみている」と言われてしまったらそれまでだけど、自分としてはそういう部分は出来れば失いたくないなって思ってる。

 

まぁ、もちろん現実的な話をすれば、映画の興行成績とか道行きとか、そういったものに左右されることも多少はある。「やったー!」と思ったり、ダメージを受けたりすることもあるとは思うよ。でも、あくまでそれは自分が手放した子どもの結果であって。「育てるのは俺じゃないから」って、もう既に違う子どものことを考えていたりもするんだよね。言ってみれば、俺の中に雄雌両方あるようなもんだ。

 

——え!? つまりそれは両性具有的な感じですか?

 

監督:そうそう。早く自分とエッチして、また次の子どもを生まなきゃいけないわけよ。

 

——だとすると、どんどん子どもが増えていきますね。

 

監督:でも、出産には携わってもらう人が大勢必要だし、お金もたくさんかかるねん。「1人妊娠出産」でも、億単位の金がかかるわけよ。

 

——なるほど! となると、子どもを育てるのは観客ということですか?

 

監督:そう。だからたまには「30年前に嫁いだ子どもに会いに行こう」と思って、夜中に酒を呑みながらDVDを観返したりしてる。「昔の俺は天才だったかもしれん」とか、訳のわからないことを言いながら(笑)。

 

——では、還暦を過ぎてもまだまだ「妊娠出産」しないといけませんね。

 

監督:そうだね。これじゃ出産して「すぐ社会に出て働きなさい!」って言ってるようなもんだよね。育てる時間がないからさ。

 

——還暦を迎える阪本監督から、いったいどんな子どもが生まれてくるのか、いまからとても楽しみです!

 

(取材・文:渡邊玲子)

(編集・写真:加藤真大)

『半世界』概要

『半世界』
配給:キノフィルムズ
2019年2月15日(金)TOHOシネマズ日比谷全国ロードショー

監督:阪本順治
出演:稲垣吾郎 長谷川博己 池脇千鶴 渋川清彦 小野武彦 石橋蓮司

 

公式サイト:http://hansekai.jp/index.html

 

 

©2018「半世界」FILM PARTNERS

関連キーワード
映画の関連記事
  • 周防正行監督待望の最新作『カツベン!』現場取材レポート!
  • 『ドント・ウォーリー』に宿るポートランド魂 ガス・ヴァン・サント監督来日レポート
  • 14年ぶりの来日!映画『パパは奮闘中!』ロマン・デュリスさんインタビュー
  • 観た人の心が軽くなるような映画を作りたい。『リアム16歳、はじめての学校』 カイル・ライドアウト監督インタビュー
おすすめの記事