日本国内はもちろん、世界各国で翻訳されて海外でも絶大な人気を誇るよしもとばなな(現・吉本ばなな)さんの小説『デッドエンドの思い出』。その中の一篇をモチーフに、韓国の新鋭チェ・ヒョンヨン監督のもと、韓国の人気アイドルグループ「少女時代」のスヨンさんと、名古屋発のエンターテイメント集団「BOYS AND MEN」の田中俊介さんをダブル主演に迎えて、日韓混合チームによって生み出された映画が、名古屋のシネマスコーレを皮切りに劇場公開されています。

 

 

このたびSWAMP(スワンプ)では、去る2月17日(日)に東京・新宿武蔵野館で舞台挨拶を終えた「ボイメン」の田中俊介さんとチェ・ヒョンヨン監督を直撃! 互いに「運命的なものを感じた」と口にする映画『デッドエンドの思い出』の舞台裏について、たっぷり伺いました。

こんな運命的な出会いは、中々ないと思います

 

――先程の舞台挨拶も拝見していたのですが、田中さんが金髪で登場されたので驚きました。『デッドエンドの思い出』の「西山くん」とは、ずいぶん印象が違いますね。

 

田中俊介(以下、田中):そうなんですよ。別人みたいですよね(笑)。

 

――演じる役柄に合わせていろいろ変わるとは思いますが、ご自身で一番しっくりくる髪型や髪色は?

 

田中:基本的には常に坊主でいたいですね。セットするのもラクチンだし、もともと野球少年だったので。

 

――そうなんですね。でも、そもそも今回演じられた西山くんというキャラクター自体、これまで『ゼニガタ』や『ダブルミンツ』といった作品で田中さんが演じられてきた役柄とは、ちょっと違うタイプですよね。西山役にキャスティングされた感想は?

 

田中:純粋に嬉しかったですね。名古屋は映画ロケの誘致が盛んで、映画の撮影自体は割と頻繁に行われているんですが、実際に「名古屋」として登場することは意外と少なかったりもするんです。でも『デッドエンドの思い出』の場合は、スヨンさん演じるユミが韓国から名古屋にやって来るという設定だったので、自分が生まれ育った名古屋をちゃんと観客に観てもらえるというのも、すごく嬉しかったんですよね。

 

――なるほど!

 

田中:あとは日韓合作映画というところにも惹かれましたね。まさか自分がこのタイミングで日本側の主演を務められるとは思っていなかったので、驚きました。とはいえ撮影中は「実はみんなが名古屋に来ているんじゃなくて、僕の方が韓国に行っているんじゃないか?」と思うくらい、孤独な感じにもなりました()

 

――監督を始めとする撮影スタッフの多くは、韓国の方だったそうですね。

 

田中:はい。撮影現場で飛び交う言語は、ほぼすべて韓国語でしたから。

 

――舞台挨拶によると、田中さんにも皆さん容赦なく韓国語で話しかけてこられたとか。

 

 

田中:そうなんですよ! 僕だけ「キョトン」とする場面もあったりして(笑)。

 

――現場で田中さんも韓国語をマスターされたんですか?

 

田中:いやいや、僕はまったくわからないですよ! でも、とにかく現場でみんなと積極的にコミュニケーションを取ることを心掛けていたので、僕自身そこに救われた部分もありますね。

 

――西山くんには陰がありつつも好青年のイメージが強いのですが、田中さんご自身は西山くんをどのようにとらえて演じられていたのでしょう?

 

田中:僕が西山を演じる上で心掛けていたのは「必ず目を見て話す」ということでした。僕自身は結構シャイな方だし、普段から「ワ~ッ」としゃべるタイプでもないんですが、撮影の前からプライベートでも常に相手の目を見て話すように意識していたんです。「みんなを楽しませたい」というサービス精神のようなものが、西山の特長なのかなぁという気がしていて。

 

――たしかに、西山くんからにじみ出る「おもてなしの心」に癒されました。

 

田中:あとは僕自身、決してすべてが「陽」な訳でなく「陰の部分」もある人間なので、そこが「西山の過去」と重なるかもなぁ、とか考えながら。でも西山は人間として魅力的すぎるから、演じるのはめちゃくちゃ難しかったですね。だからあまり事前に作り込み過ぎずに、僕が現場で感じ取ったものをうまく役柄に反映できたらいいなと思って演じていました。

 

――でもそれって、ある意味すごく怖いことでもありますよね。現場で感じたことを表現しながら相手と合わせていくのは、すごくスリリングな感じがします。

 

田中:そう! めちゃくちゃ勇気が要るんですよ。既に僕の中には「現場に入ったらカメラが回る直前は1人で役に集中する」というルーティンがあったのですが、今回はそれをぶち壊すところから始めたんです。作品以外のことでも全然いいから、とにかくみんなと沢山しゃべって笑って、カメラが回るギリギリまでコミュニケーションをとる。そこで生まれる空気感が、そのままスクリーンに映るといいなと思ったんです。

 

――その雰囲気はスクリーンからも、しっかり伝わってきました。パンフレットを拝見すると、カフェのお皿は田中さんの私物だったそうですね。どんな経緯があったんですか?

 

田中:実は、僕の実家はカフェなんです。

 

――へぇ! そうだったんですね。

 

田中:「キッチンに立っている感覚を味わっておこうかなぁ」と思って、撮影に入る前に実家のカフェで少しだけアルバイトをしたり。「いいじゃん! 自分ちカフェだし!」と思って(笑)。それが役作りに直接活かせるのかどうかは、わからなかったんですけどね。

 

――いやいや、それは役作りにもってこいじゃないですか。

 

田中:カフェを手伝いながら「今度こういう映画を撮るんだ」っていう話を両親にもしていたので、カフェのお皿を撮影のために提供してくれたんです。そういう意味では、今回の作品はいろんな面で自分自身と重なるものがすごく多かったんですよね。例えばユミを演じたスヨンさんと僕には、実はいくつも共通点があって。

 

――というと?

 

田中:1990年生まれで年齢も一緒だし、もともとグループ活動をしていて、役者としても頑張りたいと思っているところも同じ。それに「できることならディスカッションをしながら、一緒に役を作り上げたい」という芝居への向き合い方も似ている。そこが物語の中のユミと西山の関係性ともリンクするところでもあったので、なおさら運命的なものを感じたんです。

 

(ここでチェ・ヒョンヨン監督がインタビューに合流)

 

――たしかヒョンヨン監督は1988年生まれでしたよね。ということは、ほぼ3人とも同世代ですが、監督は田中さんのご実家がカフェだということは、もともとご存知だったんですか?

 

 

監督:いえ。運命です!

 

田中:「僕の実家カフェですよー」って言ったら、「えーっ」って驚かれました(笑)。

 

――映画の中で、西山くんが店長を務めるカフェ兼ゲストハウスの「エンドポイント」は日本語だと「袋小路」という意味ですが、メイキングによるとあの場所は実際には袋小路ではなくて、私道だった道路を封鎖して作ったそうですね。いまは期間限定のカフェとしてオープンされているそうですが、そこに行けば西山くんや常連さんたちにも会えるような気がしてしまいます。内装にもこだわりが感じられて、とても素敵な空間でした。

 

監督:ロケハンの時に紹介してもらったカフェが、どこも撮影するには狭すぎてなかなかイメージ通りのお店が見つからなかったんです。そんなとき美術監督が「多分ここだと思いますよー」って連れて行ってくれたのが、まさしくそのスペースだったんです。当時そこは空き家で中はガランとした状態だったのですが、運命的なものを感じてすかさず「ここです! 絶対ここじゃないとダメです!」ってお願いしたんです。その家自体が「待っていたよ」って言ってくれているような感じがしたんですよね。

 

――空き家だったスペースを、短期間で素敵なカフェに生まれ変わらせるのは、相当大変だったのでは?

 

監督:そうなんです。言葉で説明してもなかなかうまく伝えられないので、私のイメージに近い(フランスの画家の)モネのキッチンの写真集を韓国で買って、日本にいる美術スタッフに託しました。いざ現場に戻ってみたら、スタッフがモネの本をいろいろ研究しながらカフェを作ってくれていて。本当に感謝しています。

 

――そこに田中さんのご実家からカフェのお皿がきたんですね。

 

監督:そうです! もう感動しました。こんな運命的な出会いは、中々ないと思います。

 

 

■次ページ:作中の随所に光る日韓合作ならではの雰囲気とは?

 

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