映画やマンガにあらわれる自分自身のこと

 

宮川:僕は自分の作品レビューには必ず目を通していて、Amazonレビューは一日に5~6回見ているんですよ。

 

――えー⁉ さすがにそれは、ちょっとマゾっぽい感じがします。褒めているコメントだけでなく……?

 

宮川:褒めてくれるコメントが本当は欲しいんですけど、もちろんそうじゃないものも目に入ります。でも、僕はいつも「コメントを書きこむエネルギーとか原動力って、いったい何なんだろう?」って考えるんですよ。

 

――コメントを書き込む原動力ですか?

 

宮川:そうです。そもそもコメントを書き込むのって、面倒くさいじゃないですか。「これはマザコンの物語だ」といったコメントはよく書かれるのですが、きっとそうやってカテゴライズする方が楽だからなんだと思うんですよね。あとは「激しいタイトルをつければ、注目を集められると思っているんでしょ!」と言われることもありますね。

 

――そういったコメントを目にして、ご自身で「イラッ」としたりはしないんですか?

 

宮川:イラッとするというよりは、「あぁ、まだそこが伝わっていなかったのか……」みたいな。だからこそ、原作を大事にしながら大森監督に映画にしていただけたことが、本当に幸せに感じているんですよね。

 

――ちなみに、原作の中で宮川さんとお兄さんがお母様のことを「俺は…倍賞千恵子見ると思い出すよ…」とか「いや~! どっちかって言うと、倍賞美津子の方じゃね?」と話題にしているシーンがあって驚きました。

 

 

宮川:似ていると思っていたんですけれど、実際にお会いしたら全然似ていなくて。「倍賞さんはめちゃくちゃ彫が深いなぁ」と思いました。

 

――監督ご自身は、母と息子の関係が描かれた原作をお読みになって、どんな感想をお持ちになられたのでしょうか? 先程のトークでは、「お袋はミーハーだから、先に俳優として人気が出た(弟の大森)南朋の方が可愛くて、自分はちょっとひねくれていた時期もあった」ともお話されていましたが。

 

大森:誰にでも母親との関係性っていうのは普通にあると思うんだけど、母親に対しての感情の出し方みたいなものは、ちょっと違うかなとは思う。でも、それはあくまでも「俺とは違うかな」っていうだけで。今回は脚本も自分で書かせてもらっているので、「ちゃんと納得してやっている」という部分も強いんです。

 

――映画の中では原作にはない万引きをするシーンが出てきますが、宮川さんは実際に万引きをしていないのに、観客にしたと思われてしまう……というエピソードがすごく面白かったです。

 

宮川:これが大森監督の映画じゃなかったら、きっと「なんだよ! 俺は万引きしてねーよ」ってずっと言っていると思うんですけれど、何ならもう「私しましたよ」って(笑)。

 

――もはや否定するどころか……。

 

大森:絶対ダメ! そんなこと言うと炎上するから(笑)。

 

――大人になってから「役に寄せるために万引きしました」って言っても、シャレにならないですからね(苦笑)。監督は万引きのシーンを入れることによって、お母さんと「僕」の関係性が一層浮き彫りになると考えられたわけですよね?

 

大森:別にそういうわけでもないんだけど、なんとなくそういうシーンを思いついちゃったんですよね。

 

宮川:原作では「おまけ付きのお菓子を買いたいんだけど、お菓子はまだ家にあるから」っていうエピソードなんですが、「親が子どものわがままを通すことを示すエピソードとしては、ちょっと弱いんじゃないか」という指摘が(担当編集の)C子さんからもあったんです。でも自分としては、やっぱりそこにはこだわりたかったんですよね。

 

――やはりマンガは全て事実に即しているということですか?

 

宮川:エッセイなので、基本的にはそうですね。でも、たしかに万引きはしてないけど友だちに石を投げて怪我をさせたこともあるしな……って考えていくうちに、だんだん「万引きくらいどうした!」って思えてきたんですよね。

 

大森:そんな話を聞くと、なんだか申し訳なくなってきちゃったな(笑)。

 

――原作との違いということでは、やはり山本KIDさんのエピソードが印象的でした。監督はKIDさんが病気であることをご存じなかったんですよね。

 

大森:発表されていなかったですからね。こちらの意図したことでは全くなかったので。舞台では出来ないことだけど、映画では表現としてずっと残っていけるものだから。とはいえ、やっぱり(樹木)希林さんには『日日是好日』が公開されて大ヒットして評価されたことは見て欲しかったし、KIDさんにも完成した『ぼくいこ』を観て欲しかったなという思いはあります。それができないのは寂しいですよね。

 

――宮川さんは脚本を読まれたときに、どのように感じましたか?

 

宮川:格闘家に対してはどうしても強さを期待してしまうところがあるじゃないですか。だからそういう意味で「監督にとってはKIDさんなんだな」って素直に納得したんです。完成した映画を拝見して、KIDさんのエピソードがちゃんと作品と一体化していたことが、僕はすごく嬉しかった。KIDさんのシーンも含めて、この映画なんだと思えたんです。

 

――なるほど。

 

大森:正直、技術的なことだったり、映画のルックみたいなことっていうのは、俺にとってはあんまり大した事じゃないんですよ。それより映画で問われているのは、もっと本質的なことだと思うから。つまり、技術的なことは上手くなれば解決できてしまうんだけど、俺が普段どんな感覚で物事を捉えているのか、どんなことを考えているのかっていうことが、映画には全部出てしまうんです。だから自分にとって、映画はスリリングだと感じるところがあるんですよね。

 

――たしかに表現にはそういった怖さがありますね。

 

大森:『ぼくいこ』みたいな映画を作れば、自分が死に対してどう向き合っているのか自然と出てくるんですよ。音楽をどう使うか、光をどこからどう当てるのかということに自分が表出されてくるから怖いんだけど、そこが面白い。だから俺はSNSを見ると腹が立つし、あまり見ないようにしているんです。

 

一同:(笑い)

 

宮川:腹立ちますよね(笑)。

 

大森:でもまぁ、見る時もありますよ(笑)。

 

――SNSを見て影響されたりすることもありますか?

 

大森:影響はされないよ。「何言ってんだ」と思ったり、褒められていたら「永遠に褒めといてくれ!」って思ったり(笑)。まぁ、基本的には影響はされないですね。

 

――Amazonレビューをよくご覧になるという宮川さんは?

 

宮川:「もっとヒロインを出してくれ!」ってよく書かれているんですけど、僕はずっとおばさんを出し続けていますね。やっぱり自分が面白いと思っているものを出すしかないし、誰かに何かを言われて変えたとしても、結局つまらないものにしかならないですから。

 

 

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